2019.11.28 発行
◆電子材料:JX金属が高導電・高強度コルソン合金を販売(11月22日)
◆3Dプリンタ:JX金属が高密度造形を可能とする3Dプリンター用純銅粉を開発(11月22日)
◆カーボンブラック:ブリヂストンが再生カーボンブラックを原材料に用いたタイヤを商用化(11月21日)
◆電池材料:帝人が上海エナジー社とライセンス契約を締結(11月21日)
◆石油化学:昭和電工が中国・盛虹煉化社(連雲港)に酢酸ビニルモノマーの製造技術ライセンスを供与(11月19日)
◆炭素繊維:東レが世界初の連続する空隙構造を持った多孔質炭素繊維を創出(11月18日)
◆樹脂:デンカがEVAエマルジョンおよび酢酸ビニル樹脂事業の撤退を発表 (11月15日)
◆リサイクル:三井化学が軟包材のマテリアルリサイクル実証試験を開始(11月15日)
◆樹脂:出光興産がマレーシア事業所内に第2SPS製造装置の建設を決定(11月14日)
◆繊維:帝人がパラ系アラミド繊維「トワロン」の生産を増強(11月13日)
◆潤滑油:出光興産がインドネシアの2カ所目の潤滑油製造工場新設により製造・販売体制を強化(11月12日)
◆研究開発:JSRが川崎市に新研究所を着工(11月11日)
◆界面活性剤:BASFが中国の金山工場におけるアルキルポリグルコシドの生産能力倍増に向けた体制を整備(11月11日)
◆リサイクル:凸版印刷がプラスチックフィルムのマテリアルリサイクル研究開発を開始(11月7日)
◆石油化学:三菱ケミカルとJXTGエネルギーが鹿島地区・石油コンビナート連携強化に向けた有限責任事業組合を設立(11月7日)
◆香料:BASFがバイオテクノロジー分野を強化し天然香料市場へ参入(11月5日)
◆電子材料:JX金属が高導電・高強度コルソン合金を販売(11月22日)
JX金属は、電子部品用として従来品よりもさらに高導電・高強度のコルソン合金の販売を開始したと発表した。
近年、携帯端末の薄型化・小型化や電池の大容量化に伴い、コネクタ端子など電子部品用の銅合金には、これまで以上に高い強度と導電性が求められている。
同社では長年培ってきた独自の合金開発のノウハウと、精密なプロセス制御技術により、高導電と高強度を両立するコルソン合金の開発・製造を行い、市場へ供給してきた。今回新たに『高導電コルソン合金 NKC4820(CDA:C64810)』、『高強度コルソン合金 NKC1816』を上市した。いずれも代表的なコルソン合金のC7025に比べて優れた特性を有しており、個々のニーズにあわせて最適な合金を選べるとしている。
◆3Dプリンタ:JX金属が高密度造形を可能とする3Dプリンター用純銅粉を開発(11月22日)
JX金属は、従来の課題であった3Dプリンターを用いた造形物の密度不足の課題を解決できる、金属3Dプリンター用純銅粉(以下、「本開発品」)を開発したことを発表した。
本開発品は、粉体の表面に特殊な表面処理を施し表面の酸化を防止している。この特殊な表面処理を施した銅粉を用いて、電子ビーム方式で造形を行ったところ相対密度で99.94%を達成し、かつ仮焼結(造形の前工程となる予備加熱プロセス時に発生する銅微粉同士の固着)を抑制できたとしている。この効果によって、微細で複雑な自由度の高い造形も可能となる。またレーザーメタルデポジション方式での造形でも相対密度98.56%という高い結果が得られているとしている。
今後、本開発品がサーバー用のヒートスプレッダーや自動車用の水冷冷却ユニットなど、さまざまな用途向けで使用されることが期待される。同社は今後、2020年年頭を目途に、サンプル品の提供を開始する予定としている。
◆カーボンブラック:ブリヂストンが再生カーボンブラックを原材料に用いたタイヤを商用化(11月21日)
ブリヂストンは、米国子会社であるブリヂストン アメリカス・インク(以下、BSAM)がタイヤの原材料の一つであるカーボンブラックを、廃タイヤを熱分解して回収した再生カーボンブラック(以下、RCB)で代替し、これを用いたタイヤを商用化し、米国市場で販売していることを発表した。
RCBとは、廃タイヤの熱分解により製造されるリサイクルカーボンブラックのことで、米国で販売中の一部のタイヤには、BSAMと提携関係にある、デルタ エナジー グループ・エルエルシー社製のRCBが使用されている。同社のRCBは、新品のカーボンブラックと同等の性能を有しながら、新品対比で製造時のCO2排出量を約81%削減することができる。
BSAMでは今後も、RCBの使用を拡大し、2020年までに乗用車用の廃タイヤ約200万本分に相当する約6,800トンのRCBを使用する計画としている。
◆電池材料:帝人が上海エナジー社とライセンス契約を締結(11月21日)
帝人は、上海エナジー社との間で、車載用リチウムイオン二次電池(LIB)に使用される溶剤系コーティングセパレータの製造に関する技術ライセンス契約を締結したことを発表した。
世界的な環境規制の強化を背景に電気自動車(EV)化が加速する中、安全で長距離走行に耐え得るLIBの需要が急速に拡大している。同社は独自技術により、ポリエチレン基材にメタ系アラミド「コーネックス」やフッ素系化合物をコーティングしたセパレータを開発し、スマートフォンやノートパソコンなどの民生用のLIB向けに展開してきたが、EV向けの展開には、生産能力の増強やコスト競争力の強化が課題となっていた。こうした中で、同社の有するセパレータ向けコーティング技術と、上海エナジー社が持つ世界トップクラスの基材生産能力およびコスト競争力とを融合させることにより、市場でのプレゼンス向上を図れると判断し、このたびの技術ライセンス契約締結に至った。
今回の技術ライセンス契約は、EV向けLIBの高性能化や安全性向上を実現する、同社独自のフッ素系化合物による溶剤系コーティングセパレータの技術に関するものである。対象となるのはコーティングの組成や生産プロセスに関わる特許で、この契約締結により、上海エナジー社の基材生産能力やコスト競争力との融合を図るとしている。
◆石油化学:昭和電工が中国・盛虹煉化社(連雲港)に酢酸ビニルモノマーの製造技術ライセンスを供与(11月19日)
昭和電工は、米国のエンジニアリング会社KBR社との提携により、中国の盛虹煉化社(連雲港)に対し、酢酸ビニルモノマー(以下、VAM)製造技術に関するライセンスを供与することを決定したと発表した。併せて、盛虹煉化社が新設するVAM生産設備に使用される触媒を供給することを発表した。
昭和電工は、大分コンビナートにて、エチレンを原料とするVAMの製造において40年の実績があり、触媒の開発も含め高い技術力を有している。KBR社とは2015年に提携し、同社の有機化学品製造技術についてのライセンスビジネスの可能性を検討しており、今回、盛虹煉化社に同社VAM製造技術が採用されることとなった。盛虹煉化社に建設される設備のVAM生産能力は年間30万トンになる見込みとしている。
◆炭素繊維:東レが世界初の連続する空隙構造を持った多孔質炭素繊維を創出(11月18日)
東レは、世界初となるナノサイズの連続する空隙構造を持った多孔質炭素繊維を創出したと発表した。
今回開発した素材をガス分離膜の構造を支える支持層に用いることで、温室効果ガス(CO2)の分離や水素製造に用いられる高性能分離膜の軽量化やコンパクト化が図られるとともに、分離性能を向上させることが出来る。
本素材は、炭素でできていることから化学的に安定しており、ガス透過性にも優れている。また、柔軟性に優れる細い繊維状であることから、ガス分離膜の支持層として用いると、モジュールに多くのガス分離膜を収納してコンパクトにでき、軽量化することもできる。様々なガス分離機能層と組み合わせることが可能であり、天然ガス精製やバイオガス精製、水素製造など、サステナブル社会の実現に向けて必須とされる、各種高性能分離膜の早期実用化への貢献を目指すとしている。
◆樹脂:デンカがEVAエマルジョンおよび酢酸ビニル樹脂事業の撤退を発表(11月15日)
デンカは、酢酸ビニルーエチレン系共重合(EVA)エマルジョン事業、および酢酸ビニル樹脂事業からの撤退を決定したと発表した。
両事業はともに 1970 年代より生産・販売しコストダウンなどの諸施策を講じてきたが、市場環境の変化が進む中、事業継続が可能な収益を安定的に確保することは困難と判断し、今回の決定に至ったとしている。
酢酸ビニルーエチレン系共重合(EVA)エマルジョン事業」(製品名:デンカEVAテックス)の生産終了時期は2021年8月末、販売は2021年12月末で終了。「酢酸ビニル樹脂事業」(製品名:サクノール、デンカ ASR、デンカメルト)の生産終了時期は2020年9月末、販売は2021年3月末で終了としている。
◆リサイクル:三井化学が軟包材のマテリアルリサイクル実証試験を開始(11月15日)
三井化学は、食品包装に代表される軟包材を対象に、廃プラスチック削減に向けたマテリアルリサイクルの実証試験を開始したことを発表した。
日本における廃プラスチックの総排出量は年間約900万トンあるとみられ、そのうち約200万トンが軟包材に由来するものと考えている。
三井化学は、この軟包材分野における廃プラスチック削減に取り組むため、フィルム加工・印刷工程で発生する廃プラスチックを再資源化し、軟包材用のフィルムとして再利用するための実証試験を、全国グラビア協同組合連合会の協力を得て、2019年8月より開始した。
更に、2020年1月には、印刷済みフィルムをロールtoロールで洗浄・印刷除去する技術を導入し、軟包材向けに安定した品質の再生樹脂の確保と、再度フィルム原料として循環利用する技術を検証するとしている。
◆樹脂:出光興産がマレーシア事業所内に第2SPS製造装置の建設を決定(11月14日)
出光興産は、マレーシア パシルグダン事業所内に第2SPS製造装置の建設を決定したことを発表した。
同装置の建設により、同社のSPS(シンジオタクチックポリスチレン)樹脂の生産規模は現状の二倍となる。
SPS樹脂は、「耐熱性(融点270℃)」「耐熱水性」「絶縁性」「電波透過性」に優れ、電気自動車を含む自動車関連部品、5Gをはじめとする高速通信機器のアンテナ部への採用等が広がっており、需要が拡大している。
マレーシアパシルグダン事業所は、同国における同社の石油化学製品製造拠点であり、SPSの原料であるスチレンモノマー等の調達に最適であること、また、今後需要の拡大が見込まれる東南アジアに位置していることから、当地での建設を決定した。第2SPS装置の生産能力は、9千トン/年であり、2022年8月商業運転開始の予定としている。
◆繊維:帝人がパラ系アラミド繊維「トワロン」の生産を増強(11月13日)
帝人グループは、アラミド事業を展開するテイジン・アラミドB.V.(オランダ)が、グローバル市場における需要の拡大に対応するため、パラ系アラミド繊維「トワロン」の生産能力を2022年までに25%以上増強すると発表した。
「トワロン」は、高強度、軽量で高い耐久性を有するパラ系アラミド繊維として、世界で、自動車、航空用コンテナ、防護、ロープやケーブルなどの海洋用途など幅広い分野で使用されている。
今回のオランダ工場の生産能力増強は、原料を製造するデルフザイル工場と、紡糸を行うエメン工場の2工場で実施する。
帝人グループは、今後も、軽量化素材による環境性能向上や循環型社会を実現するとしている。
◆潤滑油:出光興産がインドネシアの2カ所目の潤滑油製造工場新設により製造・販売体制を強化(11月12日)
出光興産は、90%出資子会社である出光ルブテクノインドネシアにおいて、インドネシアにおける高性能潤滑油の需要増加に対する供給能力強化を目的に、インドネシアのブカシ県内に、年間5万KLの生産能力を有する潤滑油製造工場(工場名:チカラン工場)を新設し、開所式を行ったと発表した。
チカラン工場は最新鋭の生産設備を備えており、2輪車・4輪車への初期充填用エンジンオイルと、交換用のOEM(相手先ブランド生産)製品を主力として製造する。
チカラン工場の新設により、インドネシアでの出光興産の生産能力は、既存のカラワン工場(生産能力:年間6万5000KL、生産開始年:2005年)と合わせて年間11万5000KLになるとしている。
◆研究開発:JSRが川崎市に新研究所を着工(11月11日)
JSRは、川崎市の国際戦略拠点であるキングスカイフロントに2021年の開所を目指し、新たに研究所を着工したと発表した。
新研究所は、未来に向けた価値の創出に取り組み、JSRグループのライフサイエンス技術の集約に加え、オープンイノベーション促進を目的に設置する。また、今後本格化するデジタル変革に向け、新研究所をインフォマティクスの拠点として強化していく計画である。
新研究所では、「ライフサイエンス研究の深堀と社会実装」、「インフォマティクスの強化」、「新事業を創出するためのインキュベーション」等の施策で新規ビジネス創出を実現するとしている。
◆界面活性剤:BASFが中国の金山工場におけるアルキルポリグルコシドの生産能力倍増に向けた体制を整備(11月11日)
BASFは、2018年に発表した生産能力拡大プロジェクトの一環として、中国・金山(ジンシャン)工場におけるアルキルポリグルコシド(APG)の生産能力を1万トン増強し、金山工場におけるAPG生産能力は、2万トンから3万トンに拡大したと発表した。
APGは、洗顔料、ボディーソープ、シャンプーなどのパーソナルケア用品に使用されており、マイルドな処方に役立ち、泡立ちの改善に使用される界面活性剤である。また、食器洗浄用洗剤などのホームケア用途、および農業用マイクロエマルジョン製剤にも応用されている。その他のAPGの利点としては、非イオン性 であるため、さまざまな界面活性剤および他の成分との相溶性が高く、100%天然由来の再生可能原料から製造されることが挙げられる。
BASFはさらに1万トンを追加して生産能力を迅速に拡大するための基本インフラ整備に必要な承認をすでに取得し、準備を進めており、近い将来に生産能力は倍増される予定で、拡大するマーケットおよび顧客の需要に対して、より適切なサポートができるようになるとしている。
◆リサイクル:凸版印刷がプラスチックフィルムのマテリアルリサイクル研究開発を開始(11月7日)
凸版印刷は、NEDOの公募プログラムの委託事業者として、「プラスチックの高度資源循環を実現するマテリアルリサイクルプロセスの研究開発プロジェクト」の実証を開始したと発表した。
同社は、本研究プロジェクトにおいて、再生されたプラスチック樹脂を軟包装フィルム化する際の課題の抽出を行い、再生プラスチック樹脂を軟包装として再利用するためのリサイクルシステムを構築する技術開発への取り組みを開始する。
凸版印刷は、PET、PP、PEを基材としたバリアフィルムを開発し、軟包装に使用される3つの主要素材すべてのモノマテリアル高機能包材を提供している。本研究プロジェクトにより、PETボトル以外のPEやPPの回収ルートの構築が実現し、国内においてもモノマテリアル包材のリサイクルの実用化が期待されるとしている。
◆石油化学:三菱ケミカルとJXTGエネルギーが鹿島地区・石油コンビナート連携強化に向けた有限責任事業組合を設立(11月7日)
三菱ケミカルとJXTGエネルギーは、茨城県鹿島地区における石油精製事業および石油化学事業の更なる連携強化に向けて、両社共同出資による有限責任事業組合(Limited Liability Partnership、以下「LLP」)の設立を決定したと発表した。
設立するLLPにおいては、石油精製から石油化学製品を製造する一連の工程を通じて、原料や製造プロセスの更なる効率化施策や、ガソリン基材の石化利用と石油化学製品の生産最適化についての検討を深化させ、両事業所一体とした操業最適化により国際競争力強化を目指す。さらに、循環型社会形成への貢献をLLPの検討テーマに据え、廃プラスチックを石油精製・石油化学の原料として再生利用するケミカルリサイクルの技術検討に取り組んでいくとしている。
◆香料:BASFがバイオテクノロジー分野を強化し天然香料市場へ参入(11月5日)
BASFは、天然香料・香粧品のグローバル市場においてIsobionics社(アイソバイオニクス、本社:オランダ)を買収し、Conagen社(コナジン、本社:アメリカ)との提携により、天然香料市場に参入することを発表した。
Isobionics社は、バイオテクノロジーをベースにした香料原料会社であり、ノートカトンやバレンセンなどのかんきつ類油成分を中心に、天然成分を開発・生産している。また、Conagen社は、発酵原料の優れた研究開発力、商品化力を有した会社である。
BASFは、アロマケミカルズのリーディングサプライヤーとして、バニリン、ノートカトン、バレンセンなど天然原料のポートフォリオを拡充する。また、BASFが持つ研究開発力と幅広い販売網に、IsobionicsとConagenのノウハウと専門知識を組み合わせることで、バイオ技術に基づいた香料原料のテクノロジーを発展させていくとしている。