2019.08.22 発行
◆有機:日産化学がシアヌル酸製造設備増強を発表(8月9日)
◆製紙用材料:荒川化学工業がベトナムに製紙用紙力増強剤などの製造販売子会社を設立(8月9日)
◆自動車部品:積水化学工業がインドで4拠点目の車輌内外装向け射出成型品工場を新設(8月8日)
◆炭素:東洋炭素が中国に子会社を設立(8月8日)
◆フィルム:大日本印刷がバリアフィルム「DNP透明蒸着フィルム IB-Film」の用途を拡大(8月7日)
◆生分解性樹脂:カネカの生分解性ポリマーを使用したセブンカフェ用ストローが試験導入を開始(8月6日)
◆樹脂関連:住友化学が欧州子会社によるトルコのコンパウンドメーカーを買収(8月5日)
◆自動車部品:昭和電工が中国のトヨタ自動車のハイブリッド車向けの発電モーター封止用BMCを供給(8月5日)
◆異種接合:昭和電工がアルミニウム合金とポリカーボネート樹脂の直接接合技術を確立(8月5日)
◆有機:日産化学がシアヌル酸製造設備増強を発表(8月9日)
日産化学は、富山工場において約20億円を投資し、シアヌル酸製造設備の増強を決定したことを発表した。完工は2020年12月を予定している。
シアヌル酸を原料として製造される塩素化イソシアヌル酸は、生活用水および排水の消毒・殺菌剤として幅広く使用されており、同社でもプール・浄化槽向けに「ハイライト」を製造・販売している。近年では途上国の飲料水・プール水など、水の衛生に対する社会的な要請の高まりから、世界中でシアヌル酸の需要が旺盛になっている。
また、同社の化学品事業ではシアヌル酸誘導品郡の伸長を主要施策に掲げており、特長あるトリアジン骨格を有するシアヌル酸由来の高機能化学品TEPIC(粉体塗料用硬化剤、半導体封止樹脂用原料、ソルダーレジストインキ用原料)、メラミンシアヌレート(非ハロゲン難燃剤、潤滑剤)の拡販およびスターファイン(シアヌル酸亜鉛:対金属用密着性向上剤、防錆塗料用添加剤)の本格事業化にも取り組んでいくとしている。
◆製紙用材料:荒川化学工業がベトナムに製紙用紙力増強剤などの製造販売子会社を設立(8月9日)
荒川化学工業は、ベトナムにおける拠点設立に関して土地予約契約を締結し、現地法人を設立することを決議したと発表した。
ASEANでは高い経済成長を背景に紙の需要が増大し、紙・パルプ産業が急成長している。同社グループでは、これまでに中国で製紙用薬品の製造・販売を進めてきたが、今回、さらなる海外展開を推進するために、ベトナムに新たな生産拠点としての現地法人を設立する。
設立する子会社の商号は荒川ケミカルベトナム社、設立予定は2019年10月、稼働開始は2021年中を予定している。事業内容は製紙用紙力増強剤などの製造および販売で、生産能力は約40千トン/年を想定している。
◆自動車部品:積水化学工業がインドで4拠点目の車輌内外装向け射出成型品工場を新設(8月8日)
積水化学工業はインド北西部に、車輌内外装向け射出成型品の生産・販売を行う合弁会社SEKISUI DLJM MOLDING PRIVATE LIMITED(以下「セキスイDLJMモールディング」)の第4工場を新設することを発表した。
第4工場の新設にかかる投資額は約9億円で、稼働は2020年4月を予定している。
積水化学の高機能プラスチックスカンパニーは、戦略分野の一つである車輌・輸送分野において、射出成型事業を主要事業の一つと位置付けている。同事業の新興国市場でのビジネスの拡大を目指し、インドで2011年に現地企業Dipty Lal Judge Mal Private Limitedとの合弁でセキスイDLJMモールディングを設立し、事業を開始した。以降、インドにおけるモータリゼーションの拡大を背景に事業規模が拡大してきた。
同社では、今後見込まれるさらなる需要増に対応するため、インド北西部で初となる工場を新設し、これにより、インドにおける生産能力を約20%増強し、事業拡大を図る。セキスイDLJMモールディングは、第4工場稼働の効果等により、2022年度に売上高90億円を目指すとしている。
◆炭素:東洋炭素が中国に子会社を設立(8月8日)
東洋炭素は、中国市場における販売強化を図るため、四川省に資本金2百万ドルでカーボンブラシの製造・販売会社(孫会社) CHENGDU TOYO TANSO CO., LTDを設立したことを発表した。同子会社は、2019年9月に完成、10月の稼動開始を予定している。
中国沿岸地域(上海市)の既存子会社に加え、安定的な需要が見込める内陸部にも拠点を持つことにより、現地の顧客ニーズによりきめ細かくスピーディーに対応することが可能になる。同社は本拠点設立を契機に、今後中国市場におけるカーボンブラシ事業のさらなる拡大に取り組むとしている。
◆フィルム:大日本印刷がバリアフィルム「DNP透明蒸着フィルム IB-Film」の用途を拡大(8月7日)
大日本印刷は、透明で水蒸気と酸素に対するバリア性に優れたフィルム「DNP透明蒸着フィルム IB-Film」のバリア性を包装用以上に高めるとともに、フィルムの複数の層の構成を工夫して、機械適性や光学特性を高めることで、ディスプレー等の産業用途の各種製品に組み込むための基材として開発し、販売を強化すると発表した。
「DNP透明蒸着フィルム IB-Film」は、単一素材(モノマテリアル)でリサイクル性を高めた環境対応包材などにバリア性を付与するためにも用いているが、新たな用途として、色域が広い液晶ディスプレーとして採用が増えているQD(Quantum Dot:量子ドット)シート用のバリアフィルムとして、2019年モデルに本フィルムが採用されている。
近年は、ディスプレー用を中心に、水蒸気や酸素を遮断するバリアフィルムとしてのニーズが拡がっているが、新機能を追加したバリアフィルムを、ディスプレー製品のほか、各種センサーやIoT機器に内蔵されるフレキシブルプリント基板の電極保護シートなど、さまざまな産業用途向けに販売していく。
大日本印刷は本フィルムを、各種光学フィルムへの転用やプリンテッドエレクトロニクス用基材として展開し、産業用途向けバリアフィルム関連製品で2022年度に年間100億円の売り上げを目指すとしている。
◆生分解性樹脂:カネカの生分解性ポリマーを使用したセブンカフェ用ストローが試験導入を開始(8月6日)
カネカは、セブン‐イレブン・ジャパンと共同で「カネカ生分解性ポリマーPHBH」を用いた製品の展開に取り組んでいるが、今回、PHBHを使用したセブンカフェ用のストローが高知県内のセブン‐イレブン41店舗において試験的に導入されたことを発表した。
PHBHは、カネカが開発した100%植物由来のバイオポリマーであり、幅広い環境下で優れた生分解性を有する。特に近年では、マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的な社会問題となっており、生態系への影響が懸念されている。PHBHは海水中で生分解する認証「OK Biodegradable MARINE」を取得しており、海洋汚染低減に貢献するとしている。
◆樹脂関連:住友化学が欧州子会社によるトルコのコンパウンドメーカーを買収(8月5日)
住友化学は、ポリプロピレン(PP)コンパウンド事業のグローバル展開を推進するため、子会社の住化ポリマーコンパウンドヨーロッパを通じ、トルコの樹脂コンパウンドメーカーであるEmas Plastik A.S.およびその関連会社(Emasグループ)を買収し、グループ会社化したと発表した。
PPコンパウンドは、PPに合成ゴムやガラス繊維、無機フィラー等を混練し耐衝撃性や剛性などを向上させた高性能な材料であり、自動車のバンパーや内装材、家電製品の筐体などに使用されている。
トルコは、欧州への輸出拠点として、多くの企業が自動車や白物家電の生産拠点を構えており、PPコンパウンドの需要は、引き続き堅調な拡大が見込まれている。Emasグループは、PPコンパウンドにおいて、トルコ国内で最大級の生産能力を有している。また、廃プラスチックの調達に強みを持っており、それらをリサイクル材料として用いたPPコンパウンドにおいて、国内トップの販売量である。
住友化学は、Emasグループの買収により、トルコ国内の自動車および家電メーカーへの生産・販売体制の強化に加え、環境意識の高い欧州でのリサイクル材料を使った製品の需要増加に対応していくとしている。
◆自動車部品:昭和電工が中国のトヨタ自動車のハイブリッド車向けの発電モーター封止用BMCを供給(8月5日)
昭和電工は、トヨタ自動車が中国国内で販売を開始したハイブリッド車の発電モーターの封止材用として、上海昭和高分子有限公司(SSHP)で生産する熱硬化性成形材料(BMC)の出荷を開始したと発表した。
昭和電工のBMCは、高熱伝導性、高絶縁性、耐熱性、高流動性、寸法安定性、耐薬品性という特長を有し、トヨタの「プリウス」等のハイブリッド車(以下、HV)発電モーター封止材用に使用されている。
今回、トヨタ自動車の中国市場向けHV2車種のモデルチェンジに当たり、電動車パワートレーンを現地開発及び現地生産とする方針に応じて、SSHPでBMCを生産し、トヨタ自動車(常熟)部品有限会社に供給を開始する。SSHPでのHV用BMCの生産は、2010年の操業開始以来初めてであるが、中国の環境規制強化による市場拡大が期待されるとしている。
◆異種接合:昭和電工がアルミニウム合金とポリカーボネート樹脂の直接接合技術を確立(8月5日)
昭和電工は、アルミニウム合金とポリカーボネート樹脂を接着剤を使わずに直接接合する画期的な技術を開発したと発表した。
金属樹脂直接接合は、工程の簡略化、高い生産性、複雑形状でも加工可能などの優位性が期待される技術であるが、これまでの金属樹脂直接接合技術の多くは粗面化した金属表面に樹脂を注入して得られるアンカー効果などの機械的結合力に依存するため、ポリカーボネート樹脂のような非晶性エンプラとの接合は難しいとされていた。
今回、同社で特殊表面処理とプライマー処理を施したアルミニウム合金を使用することで、ポリカーボネート樹脂との直接接合を可能にした。開発した接合技術はアンカー効果だけではなく、化学結合力も併せ持つ接合方法である。
本技術はスマートフォンの筐体用途に適用可能である。今後はアルミニウムの表面処理技術やプライマーの塗工条件を最適化し、接合強度・耐久性を高める開発を進める。将来的には本技術の適合樹脂を拡充させ、より耐熱性の高いスーパーエンプラへ応用を実現し、自動車部品用途での実用化を目指すとしている。