2020.03.12 発行
◆樹脂:旭化成がAS、ABSおよびACS樹脂事業から撤退(3月6日)
◆繊維関連:旭化成がSage社による米国Adient社の自動車内装ファブリック事業の買収を発表(3月6日)
◆接着剤:帝人フロンティアが環境に配慮したゴム補強繊維用の接着剤を開発(3月5日)
◆電子材料:三井金属がキャリア付き極薄銅箔の新規製品の量産を開始(3月4日)
◆樹脂関連:三菱ガス化学と田岡化学工業が合弁会社設立を検討(3月4日)
◆樹脂関連:日本ポリプロがタイで合弁会社を発足(3月 4日)
◆リサイクル:住友化学が室蘭工業大学とケミカルリサイクル技術に関する共同研究を推進(3月4日)
◆燃料電池材料:東レがドイツで水素・燃料電池用核心部材の第2工場を新設(3月3日)
◆LNG:千代田化工建設が米国、キャメロンLNGプロジェクト第2系列の商業運転を開始(3月3日)
◆二次電池:三洋化成の子会社が次世代型リチウムイオン電池の事業開発のため第一量産工場を設立(3月2日)
◆新素材:ダイセルが酢酸セルロースと石灰石を使用した新素材をTBMと共同開発(3月2日)
◆樹脂:旭化成がAS、ABSおよびACS樹脂事業から撤退(3月6日)
旭化成は、スチレン系樹脂であるAS樹脂、ABS樹脂およびACS樹脂(製品名:スタイラック、エステロイ)事業から撤退することを決定したと発表した。
近年、同社は国内市場の大幅な需要減などによる事業損益の悪化を受け、水島製造所のABS樹脂工場を閉鎖するなど事業構造の改善を図ってきた。しかし、グローバルABS市場で同社製品の優位性を発揮することができず、収益性の改善も進まないことから当事業の撤退に至った。
生産および営業は2021年3月末に終了する予定としている。
◆繊維関連:旭化成がSage社による米国Adient社の自動車内装ファブリック事業の買収を発表(3月6日)
旭化成は、米国子会社のSage Automotive Interiors, Inc. (以下Sage社)が、欧州自動車市場における事業拡大と基盤強化を目的に、大手自動車シートサプライヤーの米国Adient社の自動車内装ファブリック事業を175百万米ドル(約188億円)で買収する契約を締結したことを発表した。
Adient社の自動車内装ファブリック事業は、欧州を中心に、グローバルに複数の拠点を有している。また、欧州の主要自動車メーカーからそのデザイン力や品質を高く評価されており、欧州のカーシートファブリック市場で有数の地位を築いている。
Adient社の自動車内装ファブリック事業が持つ欧州を中心としたマーケティング・生産・開発機能とSage社の事業を組み合わせることで、欧州市場の深耕を期待し、両社間での協議を経て、本買収の合意に至ったとしている。
◆接着剤:帝人フロンティアが環境に配慮したゴム補強繊維用の接着剤を開発(3月5日)
帝人フロンティアは、レゾルシン・ ホルムアルデヒド(RF)を含まない、環境に配慮したゴム補強繊維向けの接着剤を開発したと発表した。
タイヤをはじめとするゴム製品において、その強度や形態安定性などを保つために使用する補強繊維の生産工程では、接着性に優れるレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)接着剤が使用されている。しかし、近年の環境や安全に対する意識の高まりから、身体に有害とされるRFを含まない接着剤のニーズが急速に高まっていた。
今回、帝人フロンティアは、RFの代替として高分子化合物を使用することにより、RFを使用せずに同等の接着性能を有する、ゴム補強繊維向けの環境に配慮した接着剤を開発した。
帝人フロンティアでは、2020年よりこの接着剤を使用したゴム補強繊維の試験生産を開始し、タイヤやベルト、ホースをはじめとする幅広い用途に向けて展開を図りながら、2028年にはライセンス生産を含め、年産20万トンを目指すとしている。
◆電子材料:三井金属がキャリア付き極薄銅箔の新規製品の量産を開始(3月4日)
三井金属は、キャリア付き極薄銅箔「MicroThin」の新規製品となる極厚キャリア製品の量産出荷を始めたことを発表した。
MicroThinは、微細回路形成に適した極薄銅箔(厚み1.5~5μm)とそれを支持するキャリア銅箔(既存製品厚み18μm)で構成されている。1300㎜までの広幅でロール出荷ができることとキャリア剥離強度の安定性に優れていることを特徴としている。極薄銅箔側は回路形成用として使用され、キャリア銅箔は顧客の工程で剥ぎ取られリサイクル資源として再利用されている。
新規に開発した同製品は、これまで18μm厚みであったキャリア銅箔を12μm厚みに薄厚化した製品である。これにより同製品製造時の銅原料の使用量削減、ユーザーの工程を含めたリサイクル・再利用にまわっていた量の削減により、銅資源の総循環量が減り省資源化が図れる。また、キャリア銅箔の薄厚化により、銅箔製造時のエネルギー削減、製品の重量減による輸送時のエネルギー削減につながり、省エネ化が図れるなどの効果が期待されるとしている。
◆樹脂関連:三菱ガス化学と田岡化学工業が合弁会社設立を検討(3月4日)
三菱ガス化学と田岡化学工業は、合弁会社の設立に関する基本合意書を締結し、光学樹脂ポリマー「ユピゼータEP」の原料モノマーの生産・販売事業を行う合弁会社設立の検討を行うことに合意したことを発表した。
三菱ガス化学の光学樹脂ポリマー「ユピゼータEP」は、スマートフォンやタブレットなどに搭載される小型カメラレンズ材料であり、需要については今後さらなる伸びが予想されている。
田岡化学工業は、「ユピゼータEP」の原料モノマーの主要調達先であるが、モノマー生産能力強化のため、生産事業の一部を新設する合弁会社に委託し、三菱ガス化学に販売する計画である。
合弁会社の設立により、新たなモノマー生産拠点の確保と更なる安定調達が可能となる。合弁会社の株主は三菱ガス化学と田岡化学工業の二社とし、合弁会社の発行株式総数の過半数を三菱ガス化学が保有する予定としている。
◆樹脂関連:日本ポリプロがタイで合弁会社を発足(3月 4日)
日本ポリプロとタイのIRPC社は、ポリプロピレンコンパウンド事業に関し、ASEAN 地域における自動車関連向けの製品・サービスの供給を目的として、タイに合弁会社を発足させることに合意したことを発表した。
日本ポリプロとIRPC社は、同該合弁会社の運営において、インラインコンパウンド設備や、両社の製造及び知的財産を含む技術資源等の強みを活用することで、技術力、マーケティング及びコスト競争力の強化を進め、ASEAN 地域の自動車関連市場への浸透を図っていく。
今後、両社は関係各国・地域の競争法当局の許認可取得に向けた手続きを進め、2020年内に合弁形態による事業運営を開始する予定としている。
◆リサイクル:住友化学が室蘭工業大学とケミカルリサイクル技術に関する共同研究を推進(3月4日)
住友化学は、室蘭工業大学と廃プラスチックを化学的に分解し、プラスチックなどの石油化学製品の原料として再利用するケミカルリサイクル技術に関する共同研究を推進することを発表した。
本共同研究では、室蘭工業大の教授が開発した『ゼオライト触媒を用いた廃プラスチックを任意のモノマーへ高選択率で分解する技術』をベースに、室蘭工業大学は、より性能を高めたプラスチック分解触媒の開発を行い、住友化学は、これまで培ってきた触媒設計や化学プロセス設計といったコア技術を生かし、室蘭工業大学が行う研究開発をサポートするとともにプラスチックの分解を最大限に促すためのプロセス技術の開発を担う。
両者が相互に連携することにより、廃プラスチックを石油化学原料へ効率的に分解するケミカルリサイクル技術の早期の確立を目指すとしている。
◆燃料電池材料:東レがドイツで水素・燃料電池用核心部材の第2工場を新設(3月3日)
東レは、水素・燃料電池用部材を開発・製造・販売する子会社Greenerity(GNT)の第2工場を新設することを決定し、起工式を行ったと発表した。
この第2工場には、水素・燃料電池の核心部材である触媒付き電解質膜(CCM)および膜・電極接合体(MEA)を効率的に生産する設備を導入し、フル生産時には、両製品合わせ、年間約1千万枚の生産を行う計画である。これは、レンジエクステンダー方式デリバリーカー約8万台分に相当する。
パリ協定や国連の持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられた世界的目標の達成に向け、欧州、中国地域では、大手Tier1や自動車メーカーが、商用車向けのレンジエクステンダー(REX)や乗用車向けを含む燃料電池車(FCV)に使用する水素・燃料電池分野へ本格参入している。これにより、CCM、MEAの需要が飛躍的に増大する見通しである。
GNTの第2工場の稼働開始は2021年11月の予定としている。
◆LNG:千代田化工建設が米国、キャメロンLNGプロジェクト第2系列の商業運転を開始(3月3日)
千代田化工建設は、米国グループ会社である千代田インターナショナル社が、米国McDermott社とジョイントベンチャーを設立し遂行中の、米国Cameron LNGプロジェクトにおいて、第2系列の商業運転を開始したと発表した。
2014年の契約締結以来、同ジョイントベンチャーはCameton LNG プロジェクトの設計・調達・建設業務に従事してきた。今回第2系列の商業運転開始に至った本案件は、3系列のLNGプラントを含み、3系列全てが完成するとLNGの年間輸出量は1,200万トン超になるとしている。
◆二次電池:三洋化成の子会社が次世代型リチウムイオン電池の事業開発のため第一量産工場を設立(3月2日)
三洋化成工業は、次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発を行う子会社APBが、全樹脂電池の量産検証の開始のため、福井県に用地及び建物を新たに取得したと発表した。
全樹脂電池は、界面活性制御技術を有する三洋化成が新開発した樹脂を用い、活物質に樹脂被覆を行い、樹脂集電体に塗布をすることで電極を形成している。この独自の製造プロセスにより、従来のリチウムイオン電池よりも工程を短縮することで、製造コスト・リードタイムの削減を実現するとともに、これまでにない高い異常時信頼性とエネルギー密度を実現している。
工場の操業開始は、2021年を予定しており、APBでは、本工場用地及び建物の取得により、世界初の全樹脂電池の商業化に向け、早期での量産技術確立を目指すとしている。
◆新素材:ダイセルが酢酸セルロースと石灰石を使用した新素材をTBMと共同開発(3月2日)
ダイセルは、無機フィラー分散系の複合材料「LIMEX」を開発・製造・販売するベンチャー企業TBMと酢酸セルロースと石灰石を組み合わせた新素材「海洋生分解性LIMEXライメックス(仮称)」の開発を開始したと発表した。
酢酸セルロースは植物由来のセルロースと、天然に広く存在する酢酸を原料として製造されるプラスチック材料である。一方、LIMEXは石灰石を主原料とし、プラスチックや紙の代替素材として、買い物袋やホテルアメニティなどに使用されている。
両社は2020年度中の採用を目標に共同開発を進めていく。将来的には紙やプラスチックの代わりとして、海洋プラスチックごみ問題の原因となっている飲食品容器や農漁業用品のほか、身の周りにある文房具など、幅広い用途への採用を目指すとしている。