2020.04.02 発行
◆電池材料:三菱ケミカルと宇部興産がLIB用電解液事業に係る合弁会社を設立(3月27日)
◆CNF:凸版印刷が国内初CNF使用の飲料向けカップを発表(3月27日)
◆電子材料:大日本印刷が5G対応製品向け透明アンテナフィルムを開発(3月26日)
◆研究開発:住友化学が石油化学品研究所に環境負荷低減の技術開発を行う研究グループを新設(3月24日)
◆ウイルス検査:デンカ生研が国立感染症研究所と新型コロナウイルス感染の診断法開発に関する共同研究契約を締結(3月24日)
◆不織布:三井化学がメルトブローン不織布製造設備を増設(3月24日)
◆新エネルギー;日揮が国内最大級のバイオマス専焼発電設備の建設プロジェクトを受注(3月24日)
◆樹脂関連:宇部興産が北米コンパウンドメーカーを買収(3月23日)
◆太陽電池材料:東洋紡が室内光で世界最高レベルの変換効率を発揮する有機薄膜太陽電池用発電材料を開発(3月23日)
◆研究開発:三菱ケミカルがデジタルトランスフォーメーションの加速に向けて高性能計算機を導入(3月23日)
◆電池材料:三菱ケミカルと宇部興産がLIB用電解液事業に係る合弁会社を設立(3月27日)
三菱ケミカルと宇部興産は、共同新設分割により新設する合弁会社にそれぞれのリチウムイオン二次電池用をはじめとする電解液事業を承継させることを決定し、合弁契約書を締結したことを発表した。
統合後の承継会社名はMUアイオニックソリューションズ株式会社、資本金は350百万円、持株比率は三菱ケミカル:80%、宇部興産:20%、設立は2020年10月の予定である。なお、当該会社の電解液生産能力(合計)は36,000 t/年としている。
◆CNF:凸版印刷が国内初CNF使用の飲料向けカップを発表(3月27日)
凸版印刷は、CNF(セルロースナノファイバー)を用いた飲料向け紙カップで、高いバリア性と密閉性を持つ「CNFエコフラットカップ」を開発し、2020年4月
よりサンプル出荷を開始することを発表した。
日本製紙グループとともに性能改善に取り組み開発したCNFをコーティングした原紙を使用することにより、本製品に高いバリア性を付与。さらに凸版印刷の高度な成型技術を活かし特殊加工を施した完全密閉構造により、商品の長期保存化を実現した。これにより、今まで固形食品用途にしか使用できなかったCNFを用いた紙カップを、飲料などの液体用途としても使用することができる。また、従来の飲料向けプラスチックカップと比較して、プラスチック使用量を約50%削減することが可能とした。価格は従来の飲料向けプラスチックカップとほぼ同等を実現している。
同社は今後、本製品を飲料メーカーや流通企業などに向けて拡販し、CNFを用いた紙容器全体で2023年度に約5億円の売上を目指すとしている。
◆電子材料:大日本印刷が5G対応製品向け透明アンテナフィルムを開発(3月26日)
大日本印刷(DNP)は、第5世代通信規格(5G)に対応した「透明アンテナフィルム」を開発したと発表した。
5Gの高速大容量のデータ通信にはミリ波帯の電波(波長1~10mm、周波数30~300GHz)が用いられるが、従来のマイクロ波と比較しミリ波は近傍製品の影響を受けやすくアンテナ設置場所の自由度が低い。また、ミリ波は電波の直進性が強く、従来以上の通信環境を確保するにはアンテナの設置数を増やす必要性があった。
こうした課題に対してDNPは、視認されない超微細金属メッシュ配線を開発し、透明アンテナフィルムを実現した。これにより、5G対応アンテナとして室内の壁や天井、大型モニター、窓ガラスなどの建造物、車体のガラス等にも貼付することで、さまざまな空間で5G電波を受信しやすくすることが可能となる。
DNPでは、今回開発した「透明アンテナフィルム」をさまざまな企業へ提供し、2022年度に量産を開始し2025年度に年間100億円の売上を目指すとしている。
◆研究開発:住友化学が石油化学品研究所に環境負荷低減の技術開発を行う研究グループを新設(3月24日)
住友化学は、サステナブルな社会の実現に貢献するため、石油化学品研究所(千葉県袖ケ浦市)に、「研究グループ(環境負荷低減技術開発)」を2020年4月に新設することを発表した。
本グループは、同社が石油化学品事業などで培ってきた触媒や化学プロセスの設計といったコア技術を活用し、炭素循環や温室効果ガス排出削減に関する環境負荷低減の技術開発に取り組む組織である。現在、複数の研究所に分散しているテーマを石油化学品研究所に集約し、研究者を約30名体制に強化することで、飛躍的に開発を加速させるとともに新規テーマにも注力する。また、優れた技術を持つ企業やアカデミアなどと積極的に連携し、環境負荷低減技術を石油化学部門における新機軸とするべく活動を進めるとしている。
◆ウイルス検査:デンカ生研が国立感染症研究所と新型コロナウイルス感染症の診断法開発に関する共同研究契約を締結(3月24日)
デンカの連結子会社であるデンカ生研は、国立感染症研究所と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断法開発に関する共同研究契約を締結したことを発表した。
AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の研究班への参画を通じて必要な抗体と抗原を国立感染症研究所より分与を受け、イムノクロマト法による簡易検査キットの開発を進めている。同社は今後1年以内に最大1日10万検査分の量産体制構築を目指している。
さらに、ELISA法や遺伝子診断法を含め、イムノクロマト法による抗原検出以外の診断方法も同時に検討を進めている。同社が 2019年9月に株式を取得した台湾PlexBio社では、新型コロナウイルスとその他の呼吸器感染症関連ウイルスの有無を同時に測定する検出法を開発中である。すでに試作品が完成し、今後台湾で実用化に向けた検証を行うとともに、日本での展開も検討するとしている。
◆不織布:三井化学がメルトブローン不織布製造設備を増設(3月24日)
三井化学は、産業材向け不織布需要の拡大に対応するため、同社100%子会社のサンレックス工業にて、メルトブローン不織布製造設備を増設し、本年1月に営業運転を開始したことを発表した。これにより、同社グループのメルトブローン不織布の生産能力は1ライン増設され、1.5倍の増能となる。
同社は、不織布事業を成長分野と位置付け、自動車用シート、マスク、農業用シート等の産業材向けに不織布を供給している。特に、メルトブローン不織布の極細繊維銘柄「nano」(ピーク繊維径が数百nm)では、フィルター用途等への製品展開を行っている。今回の増設により、さらなる不織布事業の強化・拡大を図るとしている。
◆新エネルギー;日揮が国内最大級のバイオマス専焼発電設備の建設プロジェクトを受注(3月24日)
日揮ホールディングスは、宮城県において、レノバなどが推進する国内最大級のバイオマス専焼発電設備建設プロジェクトを受注したと発表した。
契約先はレノバ、東京ガス、ユナイテッド計画、みずほリースで構成される合同会社石巻ひばり野バイオマスエナジーである。
同プロジェクトは宮城県石巻市に、出力が74.95MW、年間発電量が一般家庭約17万世帯の年間使用電力量に相当する約530,000MWhの国内最大級となるバイオマス専焼発電所を新設するものである。発電用燃料は、木質ペレットおよびPKS(パーム椰子殻)を使用し、2023年に運転開始の予定としている。
◆樹脂関連:宇部興産が北米コンパウンドメーカーを買収(3月23日)
宇部興産は、豊田通商の連結子会社でアメリカのコンパウンド受託加工会社Premium Composite Technology North America(PCTNA社)の買収を決定したと発表した。
PCTNA社は、豊田通商グループ企業として2009年に設立され、アメリカにおいて主にナイロン以外の樹脂を原料とするプラスチックコンパウンド受託加工事業を行っている。
宇部興産は、今回の買収により、従来の日本・タイ・スペインの製造拠点に加え、新たに北米においても自社コンパウンド製造拠点を獲得することになる。
自動車分野において世界有数の市場でもある北米には、多くの日系OEM/Tier-1が進出し、製造だけでなく開発業務も行う等、現地化を加速化させている。宇部興産は、日本・アジア・欧州・北米の4極体制の確立により、自動車メーカー(OEM)/自動車部品メーカー(Tier-1)へのグローバルな供給が可能となる。また、PCTNA社の持つ樹脂コンパウンドに関する技術・ノウハウを獲得することが出来るとしている。
◆太陽電池材料:東洋紡が室内光で世界最高レベルの変換効率を発揮する有機薄膜太陽電池用発電材料を開発(3月23日)
東洋紡は、次世代の太陽電池として注目を集める有機薄膜太陽電池(以下、OPV)用に開発中の発電材料について、昨夏よりフランス政府機関CEAと共同研究を行い、薄暗い室内で世界最高レベルの変換効率を実現するガラス基板のOPV小型セルや、軽くて薄いPETフィルム基板のOPVモジュールの試作に成功したと発表した。
OPVは、炭素や硫黄原子などを含む有機物の発電材料を溶媒に溶かし、電極を有するガラスやプラスチックの基板上に塗布するなどの方法で作製される太陽電池である。軽くて薄い形状にもできるため、現在普及している無機太陽電池では設置が困難な、壁面や布地などにも貼付が容易であり、「IoT」に欠かせないセンサー類やウェアラブルデバイスのワイヤレス電源として、普及が期待されている。
今回の共同研究で得たノウハウをもとに、今後は電池メーカーを中心に本材料を提案。まずは温湿度センサーや人感センサーなどのワイヤレス電源用途で、2022年度中の採用を目指すとしている。
◆研究開発:三菱ケミカルがデジタルトランスフォーメーションの加速に向けて高性能計算機を導入(3月23日)
三菱ケミカルは、研究開発分野におけるデジタルトランスフォーメーション(以下:DX)を加速するため、本年秋に、日本の化学業界においてトップクラスの計算処理能力を持つ高性能計算機(以下:HPC)を導入することを発表した。
同社はこれまでも、計算科学技術やマテリアルズ・インフォマティクスを素材・材料開発に用いてきたが、DXの加速のためにはHPCを最大限に活用することが不可欠と判断した。
今回、自社の製品開発に必要な計算に最適化した独自仕様のHPCを設計・導入することにより、これまで不可能だった規模や量の計算を高速に行うことを実現し、研究開発のイノベーションを推進する。また、HPCの自社運用は、その活用に必要なオープンソースコード利用や自動計算に関するノウハウの蓄積においても大きなメリットをもたらすことが期待できるとしている。