2023.12.07 発行
◆無機:東ソーが中性無水芒硝の生産および販売を停止(12月1日)
◆バイオ、電子材料:保土谷化学工業が韓国事業における生産設備増強(11月30日)
◆樹脂添加剤:リケンテクノスがリサイクル硬質塩ビ用改質材を開発(11月30日)
◆インキ:DICの子会社が中国において新インキ工場の建設を開始(11月29日)
◆電池関連:大日本印刷がリチウムイオン電池用バッテリーパウチの工場として米国に建設用地を取得(11月29日)
◆電子材料:東洋紡と東洋紡エムシーが電材用途向けに環境配慮型の高耐熱接着シートを開発(11月29日)
◆リサイクル:東洋インキが相川鉄工・萩原工業とプラスチックリサイクルに関する共同開発契約を締結(11月28日)
◆印刷関連:東レが完全水現像の製版方式および高精細な印刷品質を実現するフレキソ版を開発(11月28日)
◆リサイクル:長瀬産業とナガセケムテックス、Sachemが国内初・半導体製造に使用される現像液の回収・再生を事業化
(11月27日)
◆バイオマス:エア・ウォーターが北海道でそば殻を原料にした低コストバイオコークス製造技術の実証事業を開始
(11月27日)
◆価格改定
・ENEOSがベンゼンの契約価格を改定
・積水化学工業がポリビニルアセタール樹脂製品を12月1日より値上げ
・積水化学工業が機能性微粒子アドバンセル製品を12月1日より値上げ
◆無機:東ソーが中性無水芒硝の生産および販売を停止(12月1日)
東ソーは、中性無水芒硝(以下、芒硝)の生産(生産能力:24,000t/年)と販売の停止を決定したと発表した。
同社は、1988年に芒硝の生産を開始して以来、安定供給に努め、事業展開を行ってきたが、近年は事業を取り巻く環境が厳しさを増している。
これまで様々な収益改善策を実施してきたが、今後も事業環境が好転する見通しが立たないことから、芒硝事業の継続を断念し、2029年9月に生産を停止する予定としている。
◆バイオ、電子材料:保土谷化学工業が韓国事業における生産設備増強(11月30日)
保土谷化学工業は、韓国内の同社グループのSFCが、2023年11月に、バイオ事業における研究開発・生産の新たな拠点となるBio Park(忠清北道清州市)を新設したと発表した。
プローブを構成する発光・消光材、オリゴユニットの合成・精製などに強みを持つ技術で、安定成長が見込まれる診断キット用材料の需要取り込みに加え、次世代医薬品である核酸医薬原料向けオリゴ核酸への参入を目標としている。
また、韓国内の同社グループのREXCELにおいても、高度な精製技術による有機EL材料の生産拡大、および半導体材料への応用展開に向けて、2024年初めに既存工場の設備能力を2倍に増強する。
グループ全体の有機EL材料の販売増に伴う増産体制の整備に加え、有機EL事業で培った高純度かつ効率的な精製が可能な独自技術を活かし、半導体材料分野への進出を狙いとしている。今後は、国内外における事業機会の拡大に向けた取り組みを加速するとしている。
◆樹脂添加剤:リケンテクノスがリサイクル硬質塩ビ用改質材を開発(11月30日)
リケンテクノスは、リサイクル硬質ポリ塩化ビニル(塩ビ)用改質材を開発したと発表した。
硬質塩ビは、剛性、耐薬品性、耐久性が高いという特長があり、建材をはじめ様々な部材に使用されている。このような優れた性能を有する一方、一度成形加工したものを粉砕し再利用する際には、熱安定性不足、溶融不足等が発生し、成形品の外観荒れや物性低下を引き起こす場合があり、リサイクルを進める上で課題が残っている。
そのなかで、同社ではコンパウンド配合技術の知見を活かして硬質塩ビのリサイクル材使用時に添加する改質材の開発を試みた。これにより、リサイクル材に当該開発品を添加することで、押出負荷を低減し、安定した外観及び寸法の成形品作成が可能となった。
なお、品種については、用途に応じて押出負荷低減、成形安定性、衝撃強度向上などの複数グレードを取り揃えているとしている。
◆インキ:DICの子会社が中国において新インキ工場の建設を開始(11月29日)
DICは、100%子会社の南通迪愛生色料(以下、南通DIC)が、江蘇省南通市で新インキ工場の建設を開始したと発表した 。
南通DICは、2002年に設立されて以降、現工場において、オフセットインキやグラビアインキを中心としたインキ製品の生産を行っているが、2021年に南通市政府から、同工場が揚子江に近接していることを理由に、環境保全を目的とした移転の要請を受けた。この要請に対し、同社は同工業園区内の南区に南通市政府が提供する用地への移転を決め、本年11月より、新工場の建設を開始した。
新工場は、生産プロセス・付帯施設の効率化を設計コンセプトとして広く取り入れている。一例を挙げると、主要品目のリキッドインキの生産現場においては、原料の仕込みや充填工程などに最新の設計を施し、生産ラインの自動化が図られる予定となっている。
新工場は2025年より生産を開始する予定であり、生産開始後は、現在、操業を行っている同園区の北区に位置する既存工場を閉鎖する予定としている。
◆電池関連:大日本印刷がリチウムイオン電池用バッテリーパウチの工場として米国に建設用地を取得(11月29日)
大日本印刷(DNP)は、リチウムイオン電池の外装材であるバッテリーパウチを生産する工場用に米国ノースカロライナ州に建設用地を取得したと発表した。
米国では、エネルギー安全保障や気候変動対策を迅速に進めるため、2022年8月に「インフレ抑制法(歳出・歳入法)(IRA:Inflation Reduction Act)」が成立している。これを契機に、EVの導入補助を後押しに市場が拡大しており、車載用リチウムイオン電池の米国内でのサプライチェーン構築に向けて、電池や部材等のメーカーによる米国への積極投資が行われている。
DNPでは、今回、さらなる伸長が見込まれる米国市場の需要に対するため、新たなバッテリーパウチ工場の開設に向けた土地を取得した。同生産拠点の稼働は2026年度を目指しており、今回の工場用地取得とスリット加工ラインの導入に100億円規模の投資を計画している。また、市況や需要に応じて、同一敷地内でのジャンボロール製造も視野に入れて検討している。
同社は、2025年度までにリチウムイオン電池用バッテリーパウチで年間約1,000億円の売上を目指すとしている。
◆電子材料:東洋紡と東洋紡エムシーが電材用途向けに環境配慮型の高耐熱接着シートを開発(11月29日)
東洋紡および東洋紡エムシーは、電子材料の接着剤用途向けに、「ビトリマー」と呼ばれる新しい架橋樹脂を応用することで、溶剤フリーで常温流通(輸送・保管)を可能にした環境配慮型のポリエステル系高耐熱接着シートを新たに共同開発したことを発表した。
従来、溶剤を含まない半硬化型の接着シートは、常温環境下では徐々に架橋が進行し硬化してしまうため、輸送や保管の際に冷蔵による低温環境の維持や、接着時に完全な架橋構造を得るため、加工工程において一定時間の加熱処理を必要としてきた。これに対し、ビトリマーを応用した同接着シートは製造時点で既に架橋反応が完了しているため、常温環境下で架橋による硬化が進むことがない。また、短時間の加熱・加圧処理を行うだけで寸法を保持したまま電子材料を接着できるため、長時間の熱架橋処理も不要である。
同接着シートは、2024年前半を目途に、東洋紡エムシーがサンプル提供、製造販売を開始する予定としている。
◆リサイクル:東洋インキが相川鉄工・萩原工業とプラスチックリサイクルに関する共同開発契約を締結(11月28日)
東洋インキと相川鉄工、萩原工業は、それぞれが保有する素材、機械およびプロセス等技術を用いた、より高品質なプラスチックリサイクルを実現するための洗浄・脱墨・異材質分離・再生等のプロセスや生産機等の開発を目的として共同開発契約を締結したことを発表した。
近年異種プラスチック、インキ、接着剤等の混入や、汚れの付着などにより再生後のプラスチックの物理的な性能が阻害されることによって、リサイクル後の出口用途が限られてしまうことが課題となっている。今回、3社は、夾雑物の除去による高品質なプラスチックの再生を実現するために、業界を超えて包括的な技術交流、実証試験等を行う同開発契約を締結するに至った。
3社は2025年に洗浄・脱墨・異材質分離・再生等のリサイクルシステムをワンパッケージとしてマーケットに提供することを目指すとしている。
◆印刷関連:東レが完全水現像の製版方式および高精細な印刷品質を実現するフレキソ版を開発(11月28日)
東レは、完全水現像の製版方式および、高精細な印刷品質を実現するフレキソ版を開発したと発表した。
今回開発したフレキソ版は、新ブランド「RESOLUCIA」として、2024年1月から販売を開始する予定である。
同品は、200線レベルの高精細に対応したことで、画像再現性が向上しただけでなく、完全水現像により、製版時間が一般的な溶剤現像方式と比べ約70%以上短縮され、高い生産効率も実現した。また、樹脂凸版を既に利用している場合は、同品の導入にあたり新規の製版設備投資が原則不要であることもメリットである。
フレキソ印刷は、従来の用途であるダンボールなどに加え、近年ではラベルや軟包装などの包装材料にも使用が拡大している。また、将来的に包装材料のリサイクル志向が強まることにともない、包装基材のモノマテリアル化が進むと予想されることから、東レではモノマテリアル軟包装印刷に「RESOLUCIA」を適用するための研究も進めていくとしている。
◆リサイクル:長瀬産業とナガセケムテックス、Sachemが国内初・半導体製造に使用される現像液の回収・再生を事業化(11月27日)
NAGASEグループで半導体関連事業を展開する長瀬産業、ナガセケムテックス、Sachemは、半導体製造に使用される高純度現像液(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、以下TMAH)の回収・再生事業を展開すると発表した。
本事業は、3 社の合弁会社で現像液の再生事業を手掛けるSN Techが電解・精製技術を導入し、新工場を東大阪に設立する計画である。半導体分野において、使用済みTMAH廃液を回収・再生し、再びTMAHとして再利用する取り組みは国内初の事例となる。また、SN Techは現像液の廃液を原料として回収するプラントの製造・販売も半導体工場向けに実施していく予定である。
本事業を通じた半導体製造工場のTMAHや水の再利用と安定調達、エネルギー削減により、コスト競争の激化が続く半導体事業における収益性改善と、持続可能な環境配慮ビジネスモデルでの実現が期待される。今後は、日本国内で年間10,000トンの高純度現像液を製造する計画としている。
◆バイオマス:エア・ウォーターが北海道でそば殻を原料にした低コストバイオコークス製造技術の実証事業を開始(11月27日)
エア・ウォーターは、北海道幌加内町、きたそらち農業協同組合、JFE条鋼、巴商会とともに、コンソーシアムを立ち上げ、北海道庁「ゼロカーボン・イノベーション導入支援事業」補助金に「そば殻を原料に用いた低コストバイオコークス製造技術の実証事業」を応募し、採択されたことを発表した。
本実証事業ではバイオコークス技術を利用した実事業を想定し、低コストにてバイオコークスを製造するプロセスを実証する。第1段階では乾燥を必要としない「そば殻」「そば残渣」「籾殻」を原料とし、乾燥プロセスを経由しない製造コストミニマムなバイオコークス製造プロセスを検討する。第2段階では水分を含むバイオマスを原料に製造したバイオコークスの一部を乾燥熱源として使用するバイオコークス製造プロセスを検討する。製造能力は1日1tを実現するプロセスを目指す。
さらに、本事業で試作したバイオコークスサンプルを用いて、幌加内町公共施設にバイオコークス温水ボイラを設置して行う温水供給の実証を行い、JFE条鋼豊平製造所の電気炉において石炭コークス代替の実証を行っていくとしている。
◆価格改定
・ENEOSがベンゼンの契約価格を改定
12月契約価格は、890$/t(前月比▲55$/t)
国内価格換算想定値は137.0円/kg
・積水化学工業がポリビニルアセタール樹脂製品を12月1日より値上げ
値上げ幅は、5%以上
・積水化学工業が機能性微粒子アドバンセル製品を12月1日より値上げ
値上げ幅は、0.5 USD/kg 以上