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2023年8月10日

2023.08.10 発行

HEADLINE 

◆電子材料:日本ゼオンが敦賀工場に大型TV用光学フィルム製造ラインの増設を完了(8月4日)
◆フィルム:東レが5G通信などで使用されるミリ波吸収フィルムを開発(8月4日)
◆CO2対策:DIC、東レ、ダイセルらが提案した「水素細菌によるCO2とH2を原料とする革新的なものづくり技術の開発」が
 NEDO「グリーンイノベーション基金事業」に実施予定先として採択(8月4日)
◆溶剤:三菱ケミカルがγ-ブチロラクトン(GBL)の生産能力増強を発表(8月3日)
◆リサイクル:住友電工、住友理工、住友ゴムが協業して、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取組みを加速(8月3日)
◆産業ガス:エア・ウォーターが北米における産業ガス供給事業に本格参入(8月3日)
◆合成燃料:出光興産がアラムコ、ENEOSと合成燃料(e-fuel)に関する3社間MOUを締結(8月2日)
◆リサイクル:凸版印刷、三井化学東セロ、三井化学が軟包材フィルム水平リサイクルの共同実証試験を開始(8月2日)
◆界面活性剤:DICが環境配慮型の高性能PFASフリー界面活性剤を開発(8月1日)
◆電子材料:住友金属鉱山と三菱ガス化学がグラノプト社の新工場の竣工を発表(7月31日)
◆エンジニアリング:千代田化工建設がENEOS向け小規模合成燃料実証設備建設工事を受注(7月31日)
◆価格改定
・ENEOSがベンゼンの契約価格を改定
・レゾナックが粉末冶金製品を11月1日納入分より値上げ

WEEKLY NEWS

◆電子材料:日本ゼオンが敦賀工場に大型TV用光学フィルム製造ラインの増設を完了(8月4日)
 日本ゼオンは、敦賀工場(福井県)に世界最大幅の大型TV用光学フィルム製造ラインの 2 系列目となる設備が竣工したことを発表した。
 ゼオノアフィルムは、同社が独自のポリマー設計技術で開発した熱可塑性プラスチック(シクロオレフィンポリマー)を原料に用い、世界初となる溶融押出法により生産された光学フィルムである。
 シクロオレフィンポリマーの特長である高い光学特性と優れた寸法安定性を有しており、大型TVやモバイル機器のディスプレイに視野角補償や反射防止等の機能を持たせる位相差フィルム用途を中心に需要が拡大している。
 今回の投資は、液晶パネルの大型化に対応するため、世界最大幅となる2,500mm幅フィルムの生産ラインであり、2020年4月より稼働した設備に続き2系列目となる。新ラインの生産能力は、1系列目と同じく年間5,000万㎡となり、2系列合計で10,000万㎡、他拠点含む既設能力と併せてTV向け位相差フィルムの生産能力はトータル21,900万㎡になるとしている。

◆フィルム:東レが5G通信などで使用されるミリ波吸収フィルムを開発(8月4日)
 東レは、ミリ波帯の電磁波を高効率で吸収するミリ波吸収フィルムを開発したと発表した。
 近年、ローカル5Gを用いたスマート工場や、ミリ波レーダー通信を用いた自動運転などが進んでいる。ミリ波は4G通信の100倍の高速大容量、1/20の超低遅延、多点同時接続といった利点があるものの、ミリ波の強い直進性に由来した反射や干渉によって生じる電磁波障害の対策も必要となる。この電磁波障害解消のため、ミリ波を吸収する電磁波吸収シートが用いられるものの、従来品は高重量で数ミリの厚さがあったため、機器設計の自由度や取り扱い性が低下するという課題があった。
 東レは、独自のナノ積層技術の応用することで、低誘電体層と高誘電体層を交互に積層した多層型ミリ波吸収フィルムを開発した。この多層構造により、20dB以上のミリ波吸収性能を有しつつ、シート厚みの大幅な薄膜化と軽量化を実現した。さらに、このミリ波吸収フィルムは厚みを変えることで周波数20GHから100GHz範囲における周波数を吸収できるとしている。

◆CO2対策:DIC、東レ、ダイセルらが提案した「水素細菌によるCO2とH2を原料とする革新的なものづくり技術の開発」がNEDO「グリーンイノベーション基金事業」に実施予定先として採択(8月4日)
 双日、電力中央研究所、Green Earth Institute(GEI)、DIC、東レ、ダイセルは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業/バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」に、「水素細菌によるCO2とH2を原料とする革新的なものづくり技術の開発」のテーマを共同で提案し、実施予定先として採択され、NEDOと契約を締結したことを発表した。
 本事業は、CO2とH2から様々な化成品や飼料原料を生産するための技術開発に取り組むものである。開発対象とする水素細菌は、CO2の固定化速度が最も速い微生物の一種とされている。その高いCO2固定化能を活かしつつ遺伝子組換えを施すことで、有用な化成品を高効率で生産する菌株を創製する。生産される化成品は、プラスチック、インクや塗料、繊維、化粧品などの原料となる。
 菌体の開発と並行して、段階的なスケールアップによる実証試験を行い、安全性と効率性の高いガス培養手法を確立するとともに、CO2の削減効果を適切に計測し、製品に環境価値を付与する。
 本事業の委託契約期間は2023~2025年度、総事業期間(予定)は2023~2030年度、総事業費は約68億円としている。

◆溶剤:三菱ケミカルがγ-ブチロラクトン(GBL)の生産能力増強を発表(8月3日)
 三菱ケミカルは、岡山事業所(倉敷市)においてγ-ブチロラクトン(以下、GBL)の生産能力の増強を決定したと発表した。
 GBLはコンデンサ用電解液や半導体洗浄、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMP)の原料等の用途に使用されている高純度溶剤である。NMPはリチウムイオン電池材料や、半導体洗浄等の用途に使用されており、同社は国内唯一のGBL・NMPメーカーとして、国内市場においてトップシェアを誇っている。リチウムイオン電池や半導体市場は今後も継続的な成長が見込まれており、旺盛な国内需要に対応するため、GBLの能力増強を決定した。
 岡山事業所におけるGBLの現生産能力は18,000t/年であり、増強後生産能力は20,000t/年となる。増強完成時期は2024年7月の予定としている。

◆リサイクル:住友電工、住友理工、住友ゴムが協業して、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取組みを加速(8月3日)
 住友電気工業、住友理工、住友ゴム工業は協業して、サーキュラーエコノミーの実現に向けたリサイクル技術の開発に取り組むと発表した。
 住友理工は、2022年11月に炭素回収・変換技術を有する米国のバイオ技術会社LanzaTech Global(以下、ランザテック社)との共同開発契約の締結を発表した。本共同開発に住友ゴムおよび住友電気工業が参画することとなり、3社が協業してランザテック社との開発に取り組むことで、ゴム・樹脂・ウレタン・金属などの廃棄物のサーキュラーエコノミーへの移行に向けた新たな技術を確立し、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に向けた取組みを加速させていく。
 今回の取組みでは、ランザテック社が有する「微生物による生合成技術」を活用し、タイヤや樹脂などの廃棄物をガス化・ガス精製した後、微生物による生合成反応を経て、新たにゴム原料となるイソプレンを生産することを目指す。最終的には、原料メーカーとの協業を進め、イソプレンを再びゴム・樹脂として利用するリサイクル技術の確立も視野に入れるとしている。

◆産業ガス:エア・ウォーターが北米における産業ガス供給事業に本格参入(8月3日)
 エア・ウォーターは、北米事業を統括するAir Water America Inc.(米国、以下AWA)を事業推進主体とし、ニューヨーク州おいて同社グループで初めてとなる空気分離装置の建設を決定し、産業ガスの製造から販売まで一貫したガス供給事業を展開すると発表した。
 AWAは、ニューヨーク州のイーストマン・ビジネス・パーク(工業団地)内に、空気分離装置(酸素、窒素、アルゴンを製造)を建設することを決定し、同パークのユーティリティー管理会社とオンサイトガス供給契約を締結した。同プラントは、パーク内に立地する大口需要家へのパイピングによるオンサイトガス供給とともに、周辺地域の顧客にローリーやシリンダーで産業ガスを供給するための製造拠点である。
 同プラントは2024年11月から建設に着手、2025年9月に稼働を開始する。製造能力は240トン/日、投資総額は約40億円の予定としている。

◆合成燃料:出光興産がアラムコ、ENEOSと合成燃料(e-fuel)に関する3社間MOUを締結(8月2日)
 出光興産は、Saudi Arabian Oil Company(以下、アラムコ)およびENEOSと、日本における合成燃料(e-fuel)に関する技術協力および実用化・普及に向けた検討に共同で取り組むことに合意し、MOUを締結したことを発表した。
 e-fuelは、再生可能エネルギー由来の水素と回収したCO2を合成することで生成される液体燃料で、運輸部門の温室効果ガス排出削減に大きな可能性を持つ燃料として注目されている。流通にあたり、貯蔵タンクやパイプラインなど既存のインフラの活用や、自動車、船舶、航空機のエンジンに手を加えることなく利用できる可能性があることから低炭素化の早期実現策として期待されている。
 出光興産は、国内のグループ製油所・事業所における合成燃料の生産検討を進め、2020年代後半までに合成燃料の生産・供給体制を確立することを目指すとしている。

◆リサイクル:凸版印刷、三井化学東セロ、三井化学が軟包材フィルム水平リサイクルの共同実証試験を開始(8月2日)
 凸版印刷、三井化学東セロ、三井化学の3社は、印刷済OPPフィルムを元の軟包材フィルムに水平リサイクルする共同実証試験を2023年8月より開始したことを発表した。
 三井化学は2022年5月に、軟包材コンバーターで発生する廃棄フィルムを回収し、インキを除去してペレット化し、軟包材フィルムに再生する取り組みを開始した。同年12月からは、凸版印刷、三井化学東セロ、三井化学の3社が、共同で本実証試験の基礎検討を開始している。2023年度は、本格的な共同実証試験として、凸版印刷において印刷調整時等に発生するOPPフィルムの廃材を三井化学が回収・印刷除去・造粒を行い、三井化学東セロが再生OPPフィルム化を実施する。
 3社は、2025年度の社会実装を目指し、本共同実証試験によって軟包材フィルムの水平リサイクルの技術及びオペレーション基盤を確立する。さらに軟包材業界におけるネットワーク拡大を通じ、軟包材フィルムの水平リサイクルの普及・発展を目指すとしている。

◆界面活性剤:DICが環境配慮型の高性能PFASフリー界面活性剤を開発(8月1日)
 DICは、有機フッ素化合物であるPFASフリーでありながら、従来の同社フッ素系界面活性剤と同等以上の性能を持つ環境配慮型の界面活性剤「MEGAFACE EFSシリーズ」を開発したと発表した。
 フッ素系界面活性剤は、少量の添加で表面張力を下げ、乳化や界面活性を改善する特性を持ち、洗浄剤、コーティング、工業用品など様々な産業分野で広く使用されてきたが、その使用にあたり環境への潜在的リスクから欧米を中心にPFAS規制の議論が進行すると共に、代替品の開発が強く求められている。
 これまでのPFASフリーの製品は、フッ素系製品と同等の性能を持つことが困難であったが、今回の開発品はフッ素系製品と同等以上の高い表面張力低下能を有し、優れた均一塗布性(レベリング性)を実現する。
 同製品は今後、従来のフッ素系製品が使用されるディスプレイ、半導体、自動車、塗料などの広範な用途において、従来品の代替としての適用が見込まれている。今後は、日本、東アジア、欧米などグローバルに事業を展開し、電子材料、電気自動車(EV)、バッテリー分野などの広範な産業をターゲットに2030年には売上高50億円を目指すとしている。

◆電子材料:住友金属鉱山と三菱ガス化学がグラノプト社の新工場の竣工を発表(7月31日)
 住友金属鉱山と三菱ガス化学は、両社の合弁会社である株式会社グラノプトが、光通信市場向け光アイソレータ等に使用されるファラデーローテータ(以下、FR)の需要の増加に対応するため、能代工業団地内(秋田県)に新工場を竣工したと発表した。
 FRとは、液相エピタキシャル成長法(LPE法)で製造されるビスマス(Bi)置換希土類鉄ガーネットからなる厚さ0.100~0.500mmの単結晶膜である。磁界を印加すると光の偏光方向を回転させる特性を有するため、高性能な光通信システムおよび高感度な光センシングにおける光源の安定化や光増幅器の発振を防止するためのキーデバイスとして、主に光アイソレータや光サーキュレータ等に利用されている。
 今後も、これらがけん引役となり、FRの需要も将来的に大きな伸びが期待されることから、将来拡張余地の高い新工場建設の判断に至ったとしている。

◆エンジニアリング:千代田化工建設がENEOS向け小規模合成燃料実証設備建設工事を受注(7月31日)
 千代田化工建設は、ENEOS より、1BD(1 Barrel per Day)合成燃料実証設備建設工事を受注したと発表した。
 本件は、ENEOSが新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」に採択された事業のもと、小規模プラントおよび大規模パイロットプラントでのスケールアップ検証を通じて水素とCO2を原料とした合成燃料製造プロセスの早期技術確立を目指すプロジェクトにおいて、小規模実証プラントの設計、調達、建設を行うものである。
 本プロジェクトで建設する実証プラントは、将来の社会実装時における燃料コスト低減を目指し、液体燃料の収率を80%以上向上させるための要素技術評価と合成燃料の一貫製造実証を目的とする。
 千代田化工建設は、本プロジェクトを通して、脱炭素社会の実現に向けた合成燃料製造技術の早期の社会実装に貢献していくとしている。

◆価格改定
・ENEOSがベンゼンの契約価格を改定
 8月契約価格は、895$/t(前月比+120$/t)、国内価格換算想定値は131.4円/kg
・レゾナックが粉末冶金製品を11月1日納入分より値上げ
 値上げ幅は、平均15%

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