2024.10.31 発行
◆エンジニアリング:東洋エンジニアリングがインドネシアで地熱発電所建設プロジェクトを受注(10月24日)
◆樹脂:BASF社が次世代IGBT半導体のハウジング製造向けに高性能PPAを開発(10月14日)
◆電子材料:東レがシリコンフォトニクスの拡大に貢献する光半導体高速実装技術を開発(10月23日)
◆ウレタン:三井化学が錦湖三井化学における新MDI生産設備の営業運転開始(10月23日)
◆ウレタン:第一工業製薬が生体適合性・力学特性を兼ね備えた水系ポリウレタン樹脂を開発(10月23日)
◆アンモニア:出光興産と三菱商事がクリーンアンモニアのサプライチェーン構築の推進を加速(10月23日)
◆バイオメタノール:出光興産と三菱ガス化学がe-メタノールおよびバイオメタノールの国内における供給体制の構築に向けた
協業を開始(10月23日)
◆繊維:KBセーレンが新たな環境配慮型繊維を開発(10月23日)
◆フィルム:大日本印刷がケミカルリサイクルPETを用いた透明蒸着フィルムを開発(10月22日)
◆バイオマス:三菱ケミカルグループが「BENEBiOL」の高バイオマスグレードを提供開始(10月21日)
◆価格改定
・東ソーが塩酸を12月1日出荷分より値上げ
◆エンジニアリング:東洋エンジニアリングがインドネシアで地熱発電所建設プロジェクトを受注(10月24日)
東洋エンジニアリングのインドネシア子会社であるPT Inti Karya Persada Tehnik(以下IKPT)は、PT Barito Renewables Energy(BREN)の子会社であるStar Energy Geothermal (Wayang Windu) Limited(SEGWWL)より、ワヤン・ウィンドゥ地熱発電所第3号機(30MW)の建設プロジェクトを受注したと発表した。
同プロジェクトは、インドネシアの国営電力会社PT Perusahaan Listrik Negara(通称PLN)が自社の運営地域において10年間にわたり推進する、インドネシアの電力マスタープランRencana Usaha Penyediaan Tenaga Listrik (RUPTL 2021-2030)における取り組みのひとつである。地熱発電は環境負荷が少ない再生可能エネルギーのひとつであり、インドネシアのカーボンニュートラル目標達成に向けた取り組みとなる。
同社は設計、調達、建設工事を一括で受注し、完工予定は2026年としている。
◆樹脂:BASF社が次世代IGBT半導体のハウジング製造向けに高性能PPAを開発(10月14日)
BASF社(本社:ドイツ)は、次世代パワーエレクトロニクス向けに、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)半導体のハウジング製造に最適なポリフタルアミド(PPA)を開発したと発表した。
現在のIGBTではBASF社の実績あるPBT(ポリブチレンテレフタレート)が広く使用されているが、次世代IGBTでは、高温に耐え、長期にわたる電気絶縁性を提供し、湿度、ほこり、汚れなどの厳しい環境条件下でも寸法安定性を維持できる材料が必要とされている。
今回開発されたPPA製品(Ultramid Advanced Nグレード)では、優れた化学耐性と寸法安定性により、IGBTの耐久性、長期性能、信頼性を強化し、エネルギー節約、より高い電力密度、効率向上のニーズを満たしている。Ultramid Advanced Nグレードは、電気自動車、高速鉄道、スマート製造、再生可能エネルギーの発電などに向けて、高性能で信頼性のある電子部品の需要拡大に対応するとしている。
◆電子材料:東レがシリコンフォトニクスの拡大に貢献する光半導体高速実装技術を開発(10月23日)
東レは、光通信技術(シリコンフォトニクス)に用いられる光半導体(InP(インジウムリン)等)をシリコン基板上に実装するための材料および技術を開発したことを発表した。
AIの進展による高速通信の拡大により、データセンターの増設が続いている一方で、多量の電力消費を伴うデータセンターの増加による将来の電力需要増大が懸念されている。このため、電気通信よりも低エネルギー損失である光通信を、現在の長距離通信だけでなく、データセンター内で用いられる短距離(<1m)通信に適用するための開発が加速している。
東レは、InP等の光半導体をレーザーで高速転写するための転写材料、および転写されたチップをキャッチしてそのままシリコン基板上に直接接合が可能なキャッチ材料、およびその実装プロセス技術について、東レエンジニアリング(以下TRENG)と連携して開発した。
TRENGは、半導体実装用のボンダーおよびレーザーマストランスファーの設備技術を保有しており、その取り組みにより、光半導体の実装速度が大幅に向上し、6000個/分(従来のフリップチップボンダーでは約4個/分)の高速実装が可能となり、データセンター内での光通信適用の加速が見込まれる。今後も連携して、実デバイスを用いた技術確立を2025年までに実現し、早期の量産適用を目指すとしている。
◆ウレタン:三井化学が錦湖三井化学における新MDI生産設備の営業運転開始(10月23日)
三井化学は、関係会社である錦湖三井化学(本社:韓国)のMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)増強生産設備が9月末に営業運転を開始したことを発表した。
MDIは、自動車部品や家具寝具、住宅や冷蔵庫の断熱材、弾性繊維や各種接着用原料など、多くの分野で使用されている代表的なポリウレタン主原料である。同社では、自動車部品や弾性繊維、合成皮革等に使用される高機MDI(モノメリック系及び変性MDI)と、断熱材等に使用される汎用MDI(ポリメリック系)を生産、販売している。今回の増強は、EV自動車を中心としたNVH(ノイズ・振動・ハーシュネス)制御に使用される高機能MDI需要の更なる拡大に対応するためのものである。増強した能力は20万トン/年であり、これまでの41万トン/年から61万トン/年となる。
また同社では、生産設備の増強に併せて、生産工程で発生する副生物を原材料として再利用するリサイクル設備を導入する。
三井化学は今回の増強によって、今後も成長が見込めるMDI事業の拡大と更なる高機能化を進めていくとしている。
◆ウレタン:第一工業製薬が生体適合性・力学特性を兼ね備えた水系ポリウレタン樹脂を開発(10月23日)
第一工業製薬は、九州大学先導物質化学研究所との共同研究成果をもとに、生体適合性を有する水系ポリウレタン樹脂を開発したことを発表した。
生体内に使用する医療機器表面には「生体適合性」、特に血液と接触する場合には「抗血栓性」が求められる。現在、Poly (2-methoxyethyl acrylate) (PMEA)やPoly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine) (PMPC)が抗血栓性コーティング材として使用されているが、PMEAは柔らかすぎて成型できない、PMPCは水溶性で表面から溶出する課題がある。
本材料はポリウレタン樹脂特有の優れた力学物性を有し、非水溶性で、従来の抗血栓性コーティング材と同程度に血小板の粘着を抑制する。また、構造の調整により皮膜の柔軟性や強度も調整可能である。さらに、タンパク質吸着抑制能および細胞非接着性を示すことから、防汚材としての利用や再生医療への応用も期待できる。
同社は今後、用途に合わせた物性のカスタマイズや性能評価を進めるとともに、サンプル提供を行い、ライフサイエンス分野を含む幅広い用途での展開を目指すとしている。
◆アンモニア:出光興産と三菱商事がクリーンアンモニアのサプライチェーン構築の推進を加速(10月23日)
出光興産及び三菱商事は、クリーンアンモニア運搬船や輸入受入拠点の効率運用に加え、ExxonMobilが米国テキサス州・ベイタウンで推進するクリーン水素・アンモニア製造プロジェクトへの参画、ならびにアンモニアの引き取りに関し、共同検討することを合意したことを発表した。
出光興産は、徳山事業所(山口県)の既設インフラを活用したアンモニア輸入受入拠点を設置し、周南コンビナート各社を含む周辺の事業所と、2030年までに100万トン超のアンモニアを燃料や原料として共同で導入することを目指している。
また、三菱商事は、同社が保有する愛媛県今治市にある LPGターミナル(波方ターミナル)をアンモニアターミナルに一部転換することを検討している。2030年までに年間約100万トンのアンモニアを、電力/運輸/化学など様々な産業用途向けに供給するハブターミナルとすべく、拠点整備に向けた準備を進めている。
本共同検討により両社の拠点を連携させ、海外から調達するクリーンアンモニアのサプライチェーン構築の検討を加速するとしている。
◆バイオメタノール:出光興産と三菱ガス化学がe-メタノールおよびバイオメタノールの国内における供給体制の構築に向けた協業を開始(10月23日)
出光興産と三菱ガス化学は、e-メタノールとバイオメタノールの国内における供給体制の構築に向けた協業を開始することを発表した。
CO2と再生可能エネルギー由来の水素を合成したe-メタノールやバイオ由来のバイオメタノールは、CO2排出量を削減するための有効なエネルギー源の一つとして注目されている。海運分野では、国際海事機関が温室効果ガス(GHG)削減目標を定めたこと等をきっかけに、多くの船舶がGHG排出の少ない燃料への転換を進めている。e-メタノールおよびバイオメタノールは、その低炭素排出特性や他の代替燃料と比較し貯蔵や取り扱いが容易であることから、重油に代わる船舶燃料としての利用が今後拡大していくことが見込まれている。
本協業の内容としては、①供給コスト低減のため、両社が保有するメタノールの貯蔵用タンクやバンカリング船等の設備を共同で運用して効率的に活用することの検討、②船舶燃料としてメタノールを供給する港湾拠点で、港湾における許認可手続きやガイドライン整備の支援・制度構築への働きかけ等の取り組み、③当該物質を共同で調達する可能性の検討を進めていく。
本協業では、船舶燃料向けをターゲットに2025年度中に供給体制を構築し、早期の需要創出と市場拡大を目指すとしている。
◆繊維:KBセーレンが新たな環境配慮型繊維を開発(10月23日)
KBセーレンは、新たにカーボンニュートラルの実現を目標とした『COOSAVE(クーセーブ)』と『ECOBREEZE(エコブリーズ)』の2種類の環境配慮型繊維を開発したことを発表した。
『COOSAVE』は、ポリエステルの課題である100℃付近での分散染料による低温染色を、ポリマーの改良で可能にした繊維である。風合いを損なわない後染め加工が可能なため、天然繊維やポリウレタンとの交編交織による新しい複合素材やストレッチ素材の開発を可能にした。
『ECOBREEZE』は、焼却時のCO2発生量の抑制を可能にするポリエステル繊維である。焼却時、炭化促進により炭化物を多く生成(炭素を灰に閉じ込める)、大気中に放出されるCO₂の発生量を抑制する。堅牢度など物性はレギュラーポリエステルと同等である。
COOSAVEの主な用途は、衣料、ユニフォーム、各種産業資材であり、11月1日より発売を開始する。2026年度の売上目標は3億円としている。
◆フィルム:大日本印刷がケミカルリサイクルPETを用いた透明蒸着フィルムを開発(10月22日)
大日本印刷は、2ケミカルリサイクルポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した「DNP透明蒸着フィルム IB-FILM」を開発したことを発表した。
ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを化学的に分解し、製品の原料として再利用する手法であり、廃プラスチックを物理的に粉砕などして再利用するマテリアルリサイクルと異なり、化学的に分解して再度合成する過程で微細な異物が取り除かれ、より衛生的でバージン樹脂と同等品質のリサイクル樹脂に再生できる。
近年、循環型経済の実現が求められる中、パッケージについても、環境に配慮した再生材料の需要が高まっている。しかし、マテリアルリサイクルによる再生プラスチックは、異物混入や汚染の除去不足などで品質(物性)が低減するという課題があり、食品や医療・医薬品、産業資材用のパッケージで求められる高い衛生性が確保できないという課題があった。この課題の解決に向けて今回、ケミカルリサイクルによるPETフィルムをベースにした同品を開発した。
今後、本製品を食品、医療・医薬品、産業資材の各メーカーに提供し、2026年度までに単年度で30億円の売上を目指すとしている。
◆バイオマス:三菱ケミカルグループが「BENEBiOL」の高バイオマスグレードを提供開始(10月21日)
三菱ケミカルグループは、植物由来のポリカーボネートジオール「BENEBiOL(ベネビオール)」について、バイオマス比率を高めたグレードの提供を10月より開始したことを発表した。
BENEBiOLは、世界に先駆けて同社グループが開発した植物由来のポリカーボネートジオールで、主にポリウレタン樹脂の主原料として使用されている。バイオマス成分を使用することで、従来の石油由来の製品に比べ、柔軟性と耐薬品性の両立、耐汚染性、特徴的な触感などの優れた機能をポリウレタン樹脂に付与でき、自動車、家具、アウトドア用品向けの塗料・コーティング剤、合成皮革、人工皮革などに採用されている。
同品の既存グレードのバイオベース度は20~50%が中心だったが、今回のHSSおよびNLDSグレードでは80%以上を達成した。また石油由来であった一部のグレードでバイオマス化を実現し(NLSグレード)、BENEBiOLの全てでバイオグレードの提供が可能となったとしている。
◆価格改定
・東ソーが塩酸を12月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、10円/kg以上