2024.03.14 発行
◆無機:日本曹達が水島工場の閉鎖を発表(3月8日)
◆燃料電池:王子ホールディングスがセルロースナノファイバーを用いた燃料電池用「高分子電解質膜」を開発(3月7日)
◆医薬関連:信越化学が医薬セルロース事業に積極投資(3月6日)
◆樹脂製品:クラボウがフッ素樹脂素材の生産設備を寝屋川工場に導入(3月6日)
◆設備投資:JX金属がひたちなか新工場(仮称)投資計画の一部変更を発表(3月6日)
◆樹脂:DICがインドIDEAL社でコーティング用樹脂の新工場を開所し本格稼働を開始(3月5日)
◆リサイクル: 日本ゼオンがシクロオレフィンポリマーのリサイクルプラントの竣工を発表(3月5日)
◆太陽電池:大日本印刷が両面採光型太陽電池モジュールの発電量を向上させるシートの提供を開始(3月5日)
◆二次電池:第一工業製薬が高容量リチウムイオン二次電池の負極用水系複合接着剤の供給体制を拡充(3月4日)
◆価格改定
・BASFがプラスチック用途向け汎用酸化防止剤およびヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を3月6日付けで世界的に
値上げ。
・デンカがポリビニルアルコールを3月15日納入分より値上げ
◆無機:日本曹達が水島工場の閉鎖を発表(3月8日)
日本曹達は、取締役会において、同社の生産拠点の1つである水島工場(岡山県)を閉鎖することを決定したことを発表した。
水島工場(以下:当該工場)は、1969 年に青化ソーダの生産を開始して以来、設備を増強しながら青化ソーダ・青化カリなどを供給してきた。
青化ソーダ・青化カリの主要原料である青酸ガスは、近隣の供給元企業よりパイプラインで輸送されているが、同企業にて生産している化学製品の市況悪化に伴い、副生される青酸ガスの大幅な減産が見込まれ、当該工場の安定生産に必要な規模の青酸ガスの調達が困難になった。
今後、安定的な調達の見通しが立たないことから、2025年度(予定)に当該工場を閉鎖することを決定したとしている。
◆燃料電池:王子ホールディングスがセルロースナノファイバーを用いた燃料電池用「高分子電解質膜」を開発(3月7日)
王子ホールディングスと山形大学は、セルロースナノファイバー(以下、CNF)を主成分とする燃料電池用「高分子電解質膜」(以下、PEM)の開発に成功したことを発表した。
既存の燃料電池等に用いられるPEMは、フッ素を含む材料で、石油由来の樹脂製であることから、安全面や環境面の課題が指摘されている。これに対し、今回開発に成功したPEMは、燃料電池に求められる高いプロトン伝導性を有しながら、木質由来のCNFを主成分とし、PFAS(有機フッ素化合物)フリーも実現した。
今後、燃料電池に対する需要は益々高まることが予想されるなか、同社は開発したPEMの実用化に向けた研究開発を進めるとしている。
◆医薬関連:信越化学が医薬セルロース事業に積極投資(3月6日)
信越化学工業は、医薬用セルロース事業の強化のために設備投資を行うと発表した。
今回の投資は、直江津工場(新潟県)で実施する。医薬用添加剤である「Shin-Etsu AQOAT(シンエツエーコート、日本薬局方ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル)」の生産能力を倍増する計画で、投資金額は100億円の見込みである。
同品は、同社が錠剤等の腸溶性コーティング剤として開発し、近年は難溶性薬物(溶解性の低い薬物)を体内で吸収し易くする機能が注目されて世界で需要が伸長している。今後も増加が継続的に見込まれるため、設備増強を決定した。なお、同計画は2026年春の完成を目指すとしている。
◆樹脂製品:クラボウがフッ素樹脂素材の生産設備を寝屋川工場に導入(3月6日)
クラボウの化成品事業部は、寝屋川工場(大阪)に新たにフッ素樹脂素材の生産設備等を導入すると発表した。
同社では、継続的な成長が見込まれる半導体市場での需要に対応するため、半導体製造装置に使用される高機能樹脂製品の生産を行っている熊本事業所に新棟を建設、2025年4月の操業開始を予定している。新棟の操業開始により高機能樹脂製品の生産能力が現状の2倍以上に増強されることから、安定的に素材を調達するため、高機能樹脂製品に使われるフッ素樹脂素材の内製化を進めるとともに、生産の効率化を図るとしている。
今回の設備投資では、寝屋川工場に約4億円を投じて高機能樹脂製品の製造に使用するフッ素樹脂素材の生産設備(1,000tプレス機、焼成炉、クリーンーム等)を新たに導入し、本年10月から順次操業を開始する予定である。また、フッ素樹脂素材の内製化については、これまで熊本事業所で一部実施していたが、今回の設備投資によりフッ素樹脂素材の生産を熊本事業所から寝屋川工場へ集約することで生産効率を向上し、供給量の拡大を図るとしている。
◆設備投資:JX金属がひたちなか新工場(仮称)投資計画の一部変更を発表(3月6日)
JX金属は、茨城県ひたちなか市に先端素材分野における新たな中核拠点とするべく、ひたちなか新工場の建設工事を進めていたが、昨年9月の台風13号で被害を受けた日立事業所(茨城県)の復旧に向けた検討を契機とし、同工場の投資内容を一部変更したことを発表した。
具体的には、日立事業所の機能の一部をひたちなか新工場へ移転することを決定したことに加え、当初ひたちなか新工場で検討していた圧延銅箔・高機能銅合金条への投資は見送り、2024年度上期に稼働予定の日立新工場(仮称)および既存工場の生産体制強靭化により今後の需要拡大に対応する。一方でひたちなか新工場では、半導体用スパッタリングターゲットを中心とした半導体材料を増強する。
投資額の大きい圧延銅箔製造設備の導入を見送ったこと等を主因に、ひたちなか新工場における投資総額は当初計画の約2,000億円規模から約1,500億円規模となる見込みであり、同社は今後の半導体分野の伸長に応じさらなる投資も検討する。同工場の試運転開始は従来計画のとおり2025年度中を目指しており、人員規模は最終的に500名以上の新たな一大主要拠点になる予定としている。
◆樹脂:DICがインドIDEAL社でコーティング用樹脂の新工場を開所し本格稼働を開始(3月5日)
DICのインドの子会社であるIDEAL CHEMI PLAST PRIVATE LTD(以下「IDEAL社」)は、コーティング用樹脂の生産工場として新たな工場を2月に開所し、本格稼働を開始したことを発表した。
これにより、コーティング用樹脂の生産能力を現行の約3倍に増強し、インド含む南アジア・中東地域でのコーティング用樹脂事業のさらなる拡大を目指す。
新工場で生産するコーティング用樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等であり、用途は自動車補修用、コイルコーティング用等の工業用である。
DICグループは、今後、南アジア以西におけるマーケティング活動をベースに、本工場をインド国内のみならず南アジア・中東地域、さらにアフリカ地域も視野に入れた生産拠点として更なるコーティング用樹脂事業の拡大を目指すとしている。
◆リサイクル: 日本ゼオンがシクロオレフィンポリマーのリサイクルプラントの竣工を発表(3月5日)
日本ゼオンは高岡工場(富山県)においてシクロオレフィンポリマー(以下、COP)のリサイクルプラントを竣工したと発表した。
今回新たに竣工したリサイクルプラントは、2022年夏より工事を進めていたものであり、COPをフィルムに加工する際に発生する廃棄樹脂を再生する。リサイクルプラントの年産能力は6,000トンである。
COPフィルム(製品名:ZeonorFilm)は、COPが持つ光学特性や低吸水性といった他にない優れた特長を活かして、ディスプレイ用位相差フィルムとして幅広く使用されており、リサイクル樹脂においても未使用樹脂と同様に高い品質が要求される。これまでの一般的なリサイクル技術では、透明性や純度に課題があったが、今回、同社が手掛けるリサイクル技術により、未使用樹脂と同等の品質レベルまで再生可能となった。リサイクルした樹脂は、フィルム製造に再利用される計画であり、今後も拡大が見込まれる市場ニーズに応えていくとしている。
◆太陽電池:大日本印刷が両面採光型太陽電池モジュールの発電量を向上させるシートの提供を開始(3月5日)
大日本印刷(以下:DNP)は、両面採光型太陽電池モジュールの発電量を向上させる「DNP太陽光発電所用反射シート」の提供を開始すると発表した。
本製品は、両面で光を受けて発電するタイプの太陽電池モジュールが設置された発電所の地面に敷設するシートである。太陽光の反射能(アルベド)を向上させることでモジュールの裏面に入射する光を増加させて発電量を高める効果がある。
2012年にFIT制度が開始され、運転開始から約10年が経過した発電所が増えている。主要部品の交換を含めた関連機器の更新も増加する中、新たに両面採光型太陽電池モジュール等を導入して発電量を増やす「リパワリング」のニーズが高まっている。
DNPは、両面採光型太陽電池モジュールの導入を検討している発電事業者や、太陽光発電所の設計・調達・建設等を手掛けるEPC(Engineering/Procurement/Construction)事業者、運用・メンテナンス等を手掛けるO&M(Operation & Maintenance)事業者等に本製品を提供し、2025年度までに累計50億円の売上を目指すとしている。
◆二次電池:第一工業製薬が高容量リチウムイオン二次電池の負極用水系複合接着剤の供給体制を拡充(3月4日)
第一工業製薬は、高容量リチウムイオン二次電池の負極用水系複合接着剤「エレクセルCRシリーズ」の供給体制を2024年3月より拡充することを発表した。
同社は、2022年にシリコン系負極材料向けで高容量リチウムイオン二次電池の長寿命化を可能にする本製品を開発しており、現在は電池メーカー等で性能評価を進めている。今回、顧客の開発ステージに合わせて生産体制を拡充した。
リチウムイオン二次電池の負極材は黒鉛が主流であるが、近年では高容量を追求するために黒鉛にシリコン系材料が少量添加されている。シリコン系材料は、充電時に膨張することがあり、その膨張が放電時に収縮することで電極構造を破壊して電池の劣化が生じるという課題があるため、膨張収縮を制御し、電池の寿命を延ばす接着剤の要求が高まっている。
本製品は、シリコン系材料の配合量に関わらず、安定した寿命特性を示す。また、樹脂の弾性率や強度のコントロールを行い、汎用品では難しい負極材の膨張収縮に適応する性質をもち、高い構造復元性を発揮する。
今後、伸長が期待される小型機器やEV分野への事業拡大を目指すとしている。
◆価格改定
・BASFがプラスチック用途向け汎用酸化防止剤およびヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を3月6日付けで世界的に
値上げ。
値上げ幅は、最大10%。なお、有効な契約がある場合についてはその内容が
優先される。
・デンカがポリビニルアルコールを3月15日納入分より値上げ
値上げ幅は、60円/kg