2025.04.03 発行
◆医薬品原料:信越化学工業が医薬セルロース事業に日欧で積極投資(3月28日)
◆繊維:東レがオレフィン系長繊維不織布「ARTORAY」の本格販売を開始(3月27日)
◆バイオマス:住友ベークライトがバイオマス由来「固形ノボラック型」リグニン変性フェノール樹脂を商業化(3月27日)
◆リサイクル:レゾナックが使用済みプラを直接基礎化学品へ再生するケミカルリサイクル技術の開発を本格始動(3月27日)
◆フィルム:住友ベークライトが単一素材で構成されリサイクルが容易な、医療機器包装用フィルムを開発(3月26日)
◆石油製品:ENEOSが石油製品の生産・供給体制を再構築(3月25日)
◆有機:三菱ケミカルグループとSNF GroupがN-ビニルフォルムアミド製造技術のライセンス契約を締結(3月25日)
◆アンモニア:三菱ガス化学、IHIなど6社がインドにおけるグリーンアンモニア製造プロジェクトへの出資検討に関する覚書を
締結(3月25日)
◆炭素循環:JFEスチール、三菱ガス化学、三菱ケミカルが水島コンビナートにおける炭素循環社会の実現に向けたサプライ
チェーンの実証実験開始を決定(3月24日)
◆CO2対策:三菱ガス化学が産業由来のCO2や副生ガスなど多様なガスを原料とするメタノール製造実証設備の建設を開始
(3月24日)
◆分析関連:大日本印刷とUBEの合弁会社が半導体関連・環境分野における分析・解析を強化(3月24日)
◆太陽電池材料:三菱マテリアルとエネコートテクノロジーズがペロブスカイト太陽電池の発電効率を向上させる電子輸送層の
成膜用インクを開発(3月24日)
◆価格改定
・タキロンシーアイが床材製品および関連製品(対象製品:ネオセーフ抗菌、NSマット、T-EVマット)を4月1日出荷分より
値上げ
・横浜ゴムが国内市販用タイヤのメーカー出荷価格を6月1日(夏用タイヤ、チューブ・フラップ)、9月1日(冬用タイヤ、
オールシーズンタイヤ)より値上げ
・アイカ工業が住器建材の設計価格を7月1日出荷分より値上げ
◆医薬品原料:信越化学工業が医薬セルロース事業に日欧で積極投資(3月28日)
信越化学工業は、医薬用セルロース事業の強化をめざし、ドイツ子会社のSE Tyloseと直江津工場の2拠点での投資を行うと発表した。
ドイツでは、医薬用添加剤である「L-HPC」の生産設備を既存設備に隣接する形で新設し、直江津工場との二拠点化を図る。2026年中の完成を目指す。一方、直江津地区では、近隣に所有している医薬用セルロース倉庫の保管能力を倍増し、製品の安定供給力の強化を図る。完成は2025年末を予定している。投資金額は上記2件で計100億円を見込んでいる。
「L-HPC」は、同社が崩壊剤として独自に開発し、世界の顧客に供給している。特に錠剤崩壊速度を高め、また錠剤製造時の強度向上を目的として使用されており世界で需要が伸長している。また、同社の医薬用セルロースは、植物由来であるパルプを主原料とし、人体に安全であることから錠剤のコーティング剤、崩壊剤などとして広く用いられている。同社は医薬用セルロースに積極的な投資を行うことで、医薬用添加剤メーカーとして供給体制を強化する。
今後、同社は安定供給をさらに強化するために日独で製造するとしている。
◆繊維:東レがオレフィン系長繊維不織布「ARTORAY」の本格販売を開始(3月27日)
東レは、オレフィン系長繊維不織布「ARTORAY(アートレイ)」シリーズを滋賀事業場で量産を開始し、2025年4月より本格販売を開始すると発表した。
資材向けを主軸に、用途に応じた3タイプを販売し、2026年には年間で10億円の事業規模に成長させることを目指す。
ARTORAY FNは、フラット加工を施した不織布で、紙に似た風合いであるが、紙よりも破れにくく、紙粉が発生しない。また、耐摩耗性に優れ、包装材料やメディカル用途への適用を想定している。
ARTORAY HSは、シート構造を嵩高に仕上げており、高い剛性、高い通気量を備えており、フィルター基材としての用途を想定している。
ARTORAY BCは、2成分複合型で、接着剤を使わず熱によって接着させるヒートシールが可能である。繊維の中心がポリエステル、その周囲をポリエチレンが覆う芯鞘構造で、ラミネート用の基材や包装材料に適している。
オレフィン系の1つであるポリプロピレン長繊維不織布は、ソフトな風合いから既に紙おむつを中心とした衛生材料向けに使用され、国内およびアジア地域に事業展開している。ARTORAYを資材用途を主軸に国内を中心に拡販を推進し、将来的にはニーズに応じて海外での展開も視野に入れるとしている。
◆バイオマス:住友ベークライトがバイオマス由来「固形ノボラック型」リグニン変性フェノール樹脂を商業化(3月27日)
住友ベークライトは、非可食バイオマス由来原料であるリグニンを活用した「固形ノボラック型」リグニン変性フェノール樹脂の商業販売を開始したことを発表した。
フェノール樹脂は高い耐熱性を有するため、プラスチックのなかでも過酷な条件に使用され、使用時や使用後に摩耗や焼失してしまう用途が多くある。このような用途ではリサイクルが困難であるためバイオマス活用が有効である。同社では、2010年以前からフェノール樹脂への適用に有望なバイオマスとして、リグニン成分の利用に関する基礎研究に着手してきた。
同社ではまず初めに安定調達が可能な紙パルプ製造の副生成物である「パルプ製造法由来リグニン」を活用したリグニン変性フェノール樹脂の量産体制を構築し、「固形ノボラック型」では世界初となるリグニン変性フェノール樹脂の商業化を実現した。
固形ノボラック型フェノール樹脂は、同社の得意とする自動車部品(成形材料、摩擦材、タイヤなど)をはじめ、幅広い用途に使用されている。同製品の商業化を機に、多様なリグニンの社会実装促進、フェノール樹脂のサステナブル化を目指して、自動車部品や各種バインダーなどへ更なる適用拡大を目指すとしている。
◆リサイクル:レゾナックが使用済みプラを直接基礎化学品へ再生するケミカルリサイクル技術の開発を本格始動(3月27日)
レゾナックとマイクロ波化学が共同して進めるプロジェクト(以下、本プロジェクト)が、NEDOの「グリーンイノベーション基金事業(以下、GI基金事業)/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」に「混合プラスチックから基礎化学品を製造するケミカルリサイクル技術の開発」として採択され、両社は2025年3月より技術開発を本格始動したことを発表した。
本取り組みは、両社が2022年に開始した共同開発をさらに発展・強化するもので、両社はGI基金事業による支援を受けながら、化石資源に頼らないプラスチック原料製造技術の確立を目指す。
レゾナックとマイクロ波化学は、2022年より使用済みプラスチックにマイクロ波を照射して分解し、基礎化学品を製造する技術の開発に共同で取り組んできた。本技術では、マイクロ波のエネルギーを使用済みプラスチックに集中的に与え、効率よく基礎化学品へ分解する。
本プロジェクトでは、実際の混合プラスチックを直接基礎化学品に変換・再生する熱分解技術に関して、有用な基礎化学品を収率60wt%以上で製造し、製造時に排出されるCO2を0.8kg-CO2/kg-オレフィン以下にする技術の開発を行う。さらに、マイクロ波加熱などを活用した熱分解を数千トン/年の実証スケールで行い、多様な使用済みプラスチックに対応できる技術の確立を目指すとしている。
◆フィルム:住友ベークライトが単一素材で構成されリサイクルが容易な、医療機器包装用フィルムを開発(3月26日)
住友ベークライトは、同社が保有する樹脂配合・共押出多層フィルム加工技術を活かし、ポリエチレン系単一素材で構成されたモノマテリアルフィルムを開発したことを発表した。
現在、幅広く使われている異素材の複合フィルムは、異なる素材を層状に組み合わせることで、軽量化や高い強度、防湿性、保存性などの優れた機能を実現している。しかし、異素材が複雑に組み合わされているため、それぞれの素材を分離することが難しく、リサイクルが非常に困難とされている。
住友ベークライトでは、この課題に対し、単一素材でありながら、包装材に求められる強度や成形性を十分に有するフィルムの開発を進めてきた。同社の共押出多層フィルム加工の技術を活かし、フィルムをポリエチレン系単一素材による構成にすることで、リサイクル性を向上させながら、本開発のターゲットである医療機器包装で重視される耐熱性・易剥離性・耐ピンホール性・熱成形性を備えたモノマテリアルフィルムを開発した。
同製品は2024年に開発を完了しており、現在、医療機器メーカー、医療機器包装材メーカーへの紹介を進めている。2025年度中の量産、販売開始を計画中としている。
◆石油製品:ENEOSが石油製品の生産・供給体制を再構築(3月25日)
ENEOSは、潤滑油を中心とする高付加価値石油製品の生産を行っている横浜製造所における潤滑油および燃料油の生産を、2026年1月から2028年3月までを目途に段階的に停止することを発表した。
国内石油製品の構造的な需要減退やアジアを中心とした国際競争の激化等、石油精製販売事業を取り巻く様々な環境を総合的に勘案した結果、製油所・製造所の生産・供給体制の再構築が急務と判断した。
なお、横浜製造所での潤滑油の生産は、同社の既存の生産拠点等への移転を検討するとしている。
◆有機:三菱ケミカルグループとSNF GroupがN-ビニルフォルムアミド製造技術のライセンス契約を締結(3月25日)
三菱ケミカルグループ(以下、同社)とSNF Group(本社:フランス)は、同社が保有する機能性高分子材料の原料であるN-ビニルフォルムアミド(NVF)の製造技術についてライセンス契約を締結したことを発表した。
NVFは製紙薬剤や水処理剤、石油採掘助剤の原料となるモノマーであり、同社が独自のNVF製造プロセスを開発し、1993年に世界で初めて自社技術による商業生産を行った。
SNF社は本契約によって高付加価値なNVFモノマーおよびその誘導体を製造・加工することが可能となり、製紙の強度、耐久性、リサイクル性を向上させることができる。新たに建設したフランスのプラントは、本契約に基づいた製造技術を用いて2025年6月から商業運転を開始する予定としている。
◆アンモニア:三菱ガス化学、IHIなど6社がインドにおけるグリーンアンモニア製造プロジェクトへの出資検討に関する覚書を締結(3月25日)
三菱ガス化学、IHI、北海道電力、商船三井、みずほ銀行、東京センチュリーの6社は、インドで開発しているグリーンアンモニア製造プロジェクトへの出資検討を目的とした覚書を締結したと発表した。
本プロジェクトでは、インドの大手再生可能エネルギー事業者であるACMEグループが同国東部オディシャ州でグリーンアンモニア設備を2030年までに新設し、年間約40万トンのグリーンアンモニアを製造する。このグリーンアンモニアを安全かつ安定的に日本へ輸送し、日本国内の発電事業者や化学メーカー等さまざまな需要家へ供給することを計画している。
アンモニアは、発電プラントや船舶における燃料利用等、さまざまな分野で脱炭素ソリューションを提供できる可能性を有しており、今後大規模な需要が見込まれている。アンモニアバリューチェーン構築を実現するためには、アンモニアの製造・輸送・利用に関わる専門性に加え、国際的な経済協力および開発支援等が重要である。これらの分野に豊富な知識と経験を有する三菱ガス化学を含む6社が連携し、アンモニア製造の特別目的会社(SPC)の設立および出資参画に向けた具体的な検討を進めるとしている。
◆炭素循環:JFEスチール、三菱ガス化学、三菱ケミカルが水島コンビナートにおける炭素循環社会の実現に向けたサプライチェーンの実証実験開始を決定(3月24日)
JFE スチール、三菱ガス化学、三菱ケミカルは、水島コンビナートで製鉄プロセスから発生する副生ガスを用いてメタノールを製造し、メタノールからプラスチック原料となるプロピレンを製造する実証実験に関する覚書を締結したことを発表した。
実証開始は2026年度を目指しており、JFEスチールは製鉄プロセスから排出される副生ガスを三菱ガス化学に供給し、三菱ガス化学は実証プラントで副生ガスを原料としたメタノール製造実証を行う。三菱ケミカルはメタノールを原料に、既設実証設備でプロピレン製造技術の適用評価を行い、その他化学品への活用を検討する。
本実証実験は、水島コンビナートにおけるGHG排出削減のため、製鉄プロセスから発生する副生ガス中のCO2を有効活用して化学品を製造する、排出削減が困難な産業が連携する新たな取り組みである。将来的に取り組みを鉄鋼と化学の連携による炭素循環のコンセプトに発展させ、GHG排出量の削減を目指すとしている。
◆CO2対策:三菱ガス化学が産業由来のCO2や副生ガスなど多様なガスを原料とするメタノール製造実証設備の建設を開始(3月24日)
三菱ガス化学は、水島工場内に産業由来のCO2や副生ガスなど多様なガスを原料とするメタノール製造実証設備の建設を開始したことを発表した。
同実証設備の建設は、JFEスチールならびに三菱ケミカルと締結した覚書の目的に対するものである。年産100トン規模のメタノール生産能力にて、2026年度の実証開始を目指している。
同社が経済産業省資源エネルギー庁の支援を受けて建設する同実証設備は、産業由来のCO2や副生ガスなど多様なガスを原料とするメタノール製造技術の実証を可能とする。2026年度より同実証設備を利用して、製鉄プロセスから排出される副生ガスを水素と直接反応させてメタノールを製造する技術を実証することを目指す。また、将来的に日本国内各地で多様なガスからメタノールの製造技術を実証することも可能にするため、移設可能なモバイルプラントとして建設する。
同社は同実証設備の活用を通じて、メタノールを介した持続可能な資源循環型社会の構築に寄与していくとしている。
◆分析関連:大日本印刷とUBEの合弁会社が半導体関連・環境分野における分析・解析を強化(3月24日)
大日本印刷とUBEの合弁会社であるUBE科学分析センター(以下、USAL)が、中長期的な市場拡大が見込まれる「半導体関連」と「環境分野」における分析・解析の機能・サービスを強化することを発表した。また、4月1日に社名をDNP科学分析センターに変更することを併せて発表した。
USALは、これまでナノメートルスケールの構造解析に力を入れ、例えば燃料電池材料の微細構造がデバイスの性能に寄与することを明らかにしてきた。その経験を大規模集積回路(LSI)の微細化や複雑な3次元構造化の流れに応用するため、ナノメートルスケールでの観察に使用する断面試料作製(前処理)が高効率で行える装置を導入している。半導体デバイスの3次元構造の評価を行うことで、顧客の製品・技術開発の加速を支援していく。また、半導体プロセスに使用するめっき液・フォトレジスト・研磨液・フィルムなどのさまざまな材料の分析に関して、ソリューション型のビジネスを展開していく。
一方、環境分野では、サーキュラーエコノミー実現のためのリサイクル素材や、カーボンニュートラル実現のためのカーボンリサイクルにおけるCO2分離回収領域で分析・評価を強化するとしている。
◆太陽電池材料:三菱マテリアルとエネコートテクノロジーズがペロブスカイト太陽電池の発電効率を向上させる電子輸送層の成膜用インクを開発(3月24日)
三菱マテリアル(以下、MMC)とエネコートテクノロジーズは、ペロブスカイト太陽電池を構成する電子輸送層の研究開発に共同で取り組み、従来比約1.5倍の発電効率を実現する塗布タイプ成膜用インクを開発したことを発表した。
近年、ペロブスカイト太陽電池は高効率で低コスト、さらに軽量・柔軟性を持つことなどから再生可能エネルギー分野で注目されている。
今回、MMCイノベーションセンターは、NEDOのグリーンイノベーション基金事業を受託したエネコートテクノロジーズより委託を受け、製造コストに優れる塗布型のプロセスを採用した電子輸送層形成材料の開発に取り組み、新たな成膜用のインクを開発した。今回開発した塗布型の電子輸送層の成膜用インクは、酸化スズナノ粒子の表面を適切な材料で被覆することで有機溶媒中に凝集させることなく分散させることに成功し、ペロブスカイト発電層に対して十分に密着した緻密な塗膜を形成することが可能となった。これによりペロブスカイト発電層から生成される電子を金属電極に効率的に輸送することができ、従来比約1.5倍の発電効率を実現した。
両社は引き続き成膜インクの塗布プロセスの開発を進め、大面積のペロブスカイト太陽電池への早期の実用化を目指すとしている。
◆価格改定
・タキロンシーアイが床材製品および関連製品(対象製品:ネオセーフ抗菌、NSマット、T-EVマット)を4月1日出荷分
より値上げ
値上げ幅は、10~30%
・横浜ゴムが国内市販用タイヤのメーカー出荷価格を6月1日(夏用タイヤ、チューブ・フラップ)、9月1日(冬用タイヤ、
オールシーズンタイヤ)より値上げ
値上げ幅は、5~8%(品種により改定率は異なる)
・アイカ工業が住器建材の設計価格を7月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、10%程度
※上記改定幅の範囲に収まらない製品も一部あり