2021.12.16 発行
◆電池材料:JFEスチールが中国における電池材料(負極材)合弁会社の工場操業を開始(12月10日)
◆無機:住友化学がノルウェーのヤラ社とクリーンアンモニアの活用推進に向けた検討を開始(12月10日)
◆化粧品原料:BASFが中国生産拠点にUVAフィルターの新工場を建設(12月10日)
◆自動車用触媒:BASFが自動車触媒事業を独立した事業体とし、電池材料とリサイクルに最大45億ユーロを投資(12月9日)
◆樹脂:三ツ星ベルトが超高分子量ポリエチレン 高摺動・帯電防止グレードUHMW-SAを発売(12月9日)
◆プラントエンジ:東洋エンジニアリングがインドにて石油精製プラントを受注(12月9日)
◆フィルム:宇部興産がポリイミドフィルムの新工場を山口県で建設(12月8日)
◆電子材料:JX金属が半導体用スパッタリングターゲットおよび圧延銅箔の生産能力増強を決定(12月8日)
◆バイオ:富士フイルムが欧州で培地の新工場を稼働(12月8日)
◆ナノファイバー:日本製紙がセルロースナノファイバーによる蓄電体の開発に向けてLED点灯検証に成功(12月8日)
◆電子材料:東レがマイクロLEDディスプレイ向け材料を開発(12月7日)
◆フィルム:アキレスが密着しても剝がしやすい透明軟質PVCフィルムの販売を開始(12月6日)
◆価格改定
・DICがPPS樹脂製品を12月20日出荷分より値上げ
・ブリヂストンが免震ゴムを12月より値上げ
・クラレが活性炭及び関連製品全般を1月1日出荷分より値上げ
・クラレクラフレックスが不織布を1月1日出荷分より値上げ
・クラレが人工皮革を1月1日出荷分より値上げ
◆電池材料:JFEスチールが中国における電池材料(負極材)合弁会社の工場操業を開始(12月10日)
JFEスチールは、100%子会社であるJFEケミカルと、中国宝武鋼鉄集団の子会社である宝武碳业科技(以下、宝武炭業)が出資する、「烏海宝傑新能源材料」(以下、烏海宝傑)のリチウムイオン電池用負極材製造工場が操業を開始したと発表した。
本合弁事業の強みとしては、合弁パートナーの宝武炭業が安定供給可能な原料ニードルコークス製造設備を保有していること、JFEケミカルが長年にわたって培ってきた負極材の開発・製造・品質管理ノウハウを生かすことができること、競争力のあるコストで生産できること(内モンゴルの安価な電力代、宝武炭業ニードルコークス設備に隣接、黒鉛化設備を自社保有、といった要因により)、などが挙げられる。
JFEケミカルでは、中国の電動車や定置型蓄電池向けを中心にリチウムイオン電池用負極材の需要を確実に捕捉するため、2022年後半からの本格的な負極材販売(年間生産能力10,000t)を目指すとしている。
◆無機:住友化学がノルウェーのヤラ社とクリーンアンモニアの活用推進に向けた検討を開始(12月10日)
住友化学は、世界最大規模のアンモニア製造会社であるノルウェーのヤラ・インターナショナル社(以下、「ヤラ社」)と、クリーンアンモニアの活用推進に向けた検討を開始することに合意したことを発表した。
アンモニアは、燃焼しても温室効果ガスであるCO2を排出しないため、火力発電の燃料として石炭火力に一定量を混ぜる混焼や、単独でエネルギー源とする専焼の技術開発が進められているほか、水素を貯蓄・輸送するための手段としても注目されている。
住友化学は、今回の合意を契機として、ヤラ社が今後生産するクリーンアンモニアを石油化学製品の原料に用いることや、工場における燃料転換のためのクリーンエネルギー源の一つとして活用することなどの検討を開始する。さらに、日本でのクリーンアンモニアの普及に向けて、同社が愛媛工場に保有する国内最大級のアンモニア貯蔵設備の活用をはじめ、ヤラ社との協業の可能性を検討するとしている。
◆化粧品原料:BASFが中国生産拠点にUVAフィルターの新工場を建設(12月10日)
BASFは、Uvinul A Plus(以下、ユビナール)のアジア生産工場への投資を強化し、今後、中国のケア・ケミカルズ金山生産拠点に新工場を建設する予定と発表した。
Uvinul A Plusは、光安定性の高いUVAフィルターの一つであり、化粧品処方に容易に配合することができ、防腐剤フリーでかつ低濃度でも効果を発揮する。新工場は、年間1,500トンの能力で設計され、2023年上半期に商業生産に入る予定である。現在、BASFはユビナールをドイツで生産しており、今回の投資により生産拠点をアジアにも拡大することになる。
近年、皮膚の健康のため、紫外線から肌を守ることの重要性への消費者の認識が高まっている。今回の投資により、スペシャリティーUVフィルターのアジア地域での生産能力を増強し、供給安定性を高めるとしている。
◆自動車用触媒:BASFが自動車触媒事業を独立した事業体とし、電池材料とリサイクルに最大45億ユーロを投資(12月9日)
BASFは、電池材料とリサイクルへの注力をさらに強化するとともに、自動車触媒と自動車触媒のリサイクルおよび関連する貴金属サービスを行う独立した事業体「BASF Automotive Catalysts and Recycling」(本社:米国)を設立すると発表した。
エレクトロモビリティへの移行に伴い、自動車業界は現在、変革期の途上にある。この新組織は、内燃機関市場の今後の変化に備えた事業運営と、将来の戦略的選択肢を可能にするものである。約20の生産拠点と4,000人以上の従業員で構成され、グローバルで事業を展開する。2022年1月から移行プロセスを開始し、最長で18ヶ月かかる見込みである。
同社の長期電池材料戦略では、2030年に70億ユーロ以上の売上を目標とした電池材料および卑金属(ベースメタル)サービスの成長計画が示されている。その成長計画を実行するために、2022年から2030年の間に、35億ユーロから45億ユーロ相当を電池材料に投資することを目指すとしている。
◆樹脂:三ツ星ベルトが超高分子量ポリエチレン 高摺動・帯電防止グレードUHMW-SAを発売(12月9日)
三ツ星ベルトは、超高分子量ポリエチレンの高摺動・帯電防止グレードとして「UHMW-SA」を開発したことを発表した。
同品はUHMW-NA(標準グレード)と比較し、摺動性・耐摩耗性に優れており、相手材へのソフトで安全な接触・摺動が可能となる為、部品の長寿命化につながる。また、帯電防止(体積抵抗率108~1010Ω・m)仕様となっているため、埃が付着しにくく、静電気放電も防ぐ事ができる。また、対PETへの高い摺動性を有しているため、ペットボトルを搬送するボトリングラインの部品として使用することで、スムーズで安全な搬送を期待できる。
ボトリングラインのほか、食品製造ライン向けスクリューガイドや、電子部品製造ライン向けローラ部品への用途展開が可能としている。
◆プラントエンジ:東洋エンジニアリングがインドにて石油精製プラントを受注
(12月9日)
東洋エンジニアリングのインド現地法人であるToyo Engineering India(以下Toyo-India)は、インドのNumaligarh Refinery Limited (以下NRL)が同国北東部アッサム州で計画する軽油水素化精製装置(355万トン/年)の新設工事を受注したと発表した。
NRLは同国政府の石油・天然ガス省傘下の石油会社で、300万トン/年から900万トン/年への既設製油所の大規模拡張を計画している。本拡張プロジェクトの総投資額は約4,000億円規模で、北東インドにおける最大の投資案件である。
Toyo-Indiaが新設する軽油水素化精製装置は、インドの新排ガス規制BS VIに準拠した軽油を製造して環境保全に対応するものである。Toyo-Indiaは設計、調達、建設、試運転までのEPC業務を一括請負で実施するとしている。
◆フィルム:宇部興産がポリイミドフィルムの新工場を山口県で建設(12月8日)
宇部興産は、有機ELディスプレイの回路基板向けに販売が拡大しているポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックス)について、新工場を宇部ケミカル工場(山口県)内に建設することを発表した。
ポリイミドフィルムは、電子情報関連機器の回路基板材料などに使用されており、スマートフォン、パソコン、デジタル家電、車載などの市場拡大や高機能化に伴い、今後も需要拡大が見込まれている。
ユーピレックスは、他のポリイミドフィルムと比較して耐熱性・機械的特性・寸法安定性に優れていることから、LCD(液晶表示装置)やOLED(有機ELディスプレイ装置)分野向けを主体としたCOF(チップ・オン・フィルム)用途において高い市場シェアを獲得している。また、FPC(フレキシブルプリント回路基板)用途においても需要が好調に推移している。
新工場は、2024年10月に試運転を予定しており、生産能力は20%増加する予定としている。
◆電子材料:JX金属が半導体用スパッタリングターゲットおよび圧延銅箔の生産能力増強を決定(12月8日)
JX金属は、半導体用スパッタリングターゲットおよび圧延銅箔の生産能力増強を決定したと発表した。
これに伴い、茨城県日立市内に2つの工場を新設する。投資額は2つの工場あわせて約300億円を予定している。
半導体用スパッタリングターゲットは、先端半導体の微細配線材料に使用されており、総額320億円規模、2020年度比約80%増の能力増強を行う。また、既存拠点の強化に加えて、約140億円をかけて日立市の日立北部工業団地内に溶解・圧延工程を担う新工場を建設する。
フレキシブルプリント基板に用いられる圧延銅箔は、通信技術の進展やモバイル端末の高機能化により需要が増大しているため、日立事業所内の白銀地区に総額160億円規模の新工場を設立する。これまで日立事業所では同製品の最終工程である表面処理を行っていたが、圧延工程の生産ラインを新工場にも設置し、2020年度比で約25%の生産能力増強をはかる。
JX金属では上記の投資の実行に加え、他拠点での設備増強も計画しており、これらも含めた投資総額は480億円規模としている。
◆バイオ:富士フイルムが欧州で培地の新工場を稼働(12月8日)
富士フイルムは、約30億円を同社オランダ工場に投資し、細胞培養に必要な培地の新工場を稼働させたと発表した。
培地は、細胞の生育・増殖のための栄養分を含む液状または粉末状の物質で、バイオ医薬品や再生医療製品など細胞培養に必要なものである。昨今のバイオ医薬品の需要増や、細胞を用いた治療法の拡大に伴い、培地市場は年率10%以上の成長が見込まれている。
今回稼働させる新工場は、日本・米国の生産拠点と同様、cGMPに準拠した、培地の最新鋭工場であり、動物由来成分を含まないカスタム培地など高品質・高機能な培地を生産することが可能である。新工場の生産能力は粉体培地:約320,000kg/年、液体培地: 約470,000L/年としている。
◆ナノファイバー:日本製紙がセルロースナノファイバーによる蓄電体の開発に向けてLED点灯検証に成功(12月8日)
日本製紙は、セルロースナノファイバー(以下「CNF」)による蓄電体の開発に向け、蓄電体実用化の検証実例としては、学術実験以外に世界で初めてCNF蓄電体のLED点灯検証に成功したと発表した。
CNF蓄電デバイスは既存の電気化学的蓄電池と比べ、①電流長時間充電法でなく高電圧短時間充電法である、②劣化がしにくくリサイクル性が高い、③化学反応を使わず安全性が高いなどの優位性が期待されている。
同社では、この蓄電デバイスの開発に向け、現在、CNF蓄電膜の製造プロセスの開発に取組んでいるが、今回の実験はその取組みの一環としている。
◆電子材料:東レがマイクロLEDディスプレイ向け材料を開発(12月7日)
東レは、マイクロLEDディスプレイの実現と性能向上に重要な役割を果たす、LEDチップを高速に配列するための『レーザー転写用材料』、LEDと配線の接合プロセスを簡素化する『接合材料』、およびディスプレイの大型化に寄与する『基板端部配線材料』を、東レエンジニアリングと連携して開発したと発表した。
マイクロLEDディスプレイは、輝度や色域などの特性に優れるほか、低消費電力を実現でき、高性能かつ環境低負荷な次世代ディスプレイとして期待されている。一方、本格的な普及に向けては、製造コストを抑えるために、多数の微小なLEDチップを規則正しく、高速に配置する技術が求められてきた。
同社は今回の開発を通して、マイクロLEDディスプレイ向けに提供できる材料を拡充し、マイクロLEDディスプレイの量産化実現に貢献するとしている。
◆フィルム:アキレスが密着しても剝がしやすい透明軟質PVCフィルムの販売を開始(12月6日)
アキレスは、粉なしスリップ性透明塩化ビニル(PVC)フィルム『アキレス サラリア』を、12月中旬より全国で販売を開始したことを発表した。
透明仕様の軟質PVCフィルムは、軟包材などに広く用いられているが、柔らかくて表面がツヤ状であることからフィルム同士が重なると密着しやすく加工時や使用時の利便性を損なう一因になっている。一般的には、その対策としてフィルム表面への粉ふり処理が行われるが、粉による商品の外観悪化の不具合や、拭き取りなどによる作業性の低下が生じるという課題がある。
アキレス サラリアは、特殊添加剤の配合によりフィルム表面に微細な凹凸が施されている。裁断適性や裁断後の解れが良好なため、加工時にも粉をふる必要がなく、一般的な粉ふり仕様の透明軟質PVCフィルムと同等の用途展開が可能としている。
◆価格改定
・DICがPPS樹脂製品を12月20日出荷分より値上げ
値上げ幅は、PPSコンパウンド(強化タイプ):40円/kg、PPSコンパウンド(非強化タイプ)、PPSニートポリマー:70円/kg
・ブリヂストンが免震ゴムを12月より値上げ
値上げ幅は、13%
・クラレが活性炭及び関連製品全般を1月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、石炭系活性炭:20~40%、ヤシ殻系活性炭:15~20%
・クラレクラフレックスが不織布を1月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、10%以上
・クラレが人工皮革を1月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、10~15%