2022.11.17 発行
◆CO2回収:産総研がダイセルと共同で希薄なCO2を高い選択率で分離回収する膜を開発(11月11日)
◆電子材料:大日本印刷が大型メタルマスクの生産ラインを黒崎工場に新設(11月10日)
◆樹脂関連:積水化学工業が米国においてポリオレフィンフォームの生産能力を増強(11月9日)
◆エンジニアリング:東洋エンジニアリング子会社が東ソーから分離精製剤製造設備建設プロジェクトを受注(11月9日)
◆エンジニアリング:東洋エンジニアリングがBASFの中国における大型石油化学プロジェクトを受注(11月8日)
◆リサイクル:コスモ石、日揮ホールディングス、レボインターナショナルが国内初の国産SAFの大規模生産の実現に向けた新会社を設立(2022年11月)
◆非鉄金属:住友金属鉱山がカナダのコテ金開発プロジェクトの計画を見直し(11月8日)
◆ゴム製品:住友理工がメキシコの自動車用防振ゴム製造工場を増強(11月8日)
◆分散剤:三洋化成工業のグループ会社であるサンノプコが高機能分散剤の生産能力増強を発表(11月7日)
◆フッ素関連:セントラル硝子がハネウェル社とHFO-1233zd(E)事業提携のパートナーシップを締結(11月7日)
◆水素関連:旭化成が水素製造用アルカリ水電解パイロット試験設備を着工(11月7日)
◆電池材料:住友化学が「柔固体」型電池の共同開発に成功(11月7日)
◆価格改定
・住友電気工業が光ケーブル及び光配線製品を11月16日受注分より値上げ
・デンカが結晶質アルミナ短繊維「デンカアルセン」を12月1日納入分より値上げ
・日本製紙が包装用紙を12月1日出荷分より値上げ
・日本製紙が印刷・情報用紙を2月1日出荷分より値上げ
◆CO2回収:産総研がダイセルと共同で希薄なCO2を高い選択率で分離回収する膜を開発(11月11日)
産業技術総合研究所(以下、産総研)とダイセルは共同で、大気中CO2のような希薄なCO2を高選択に分離回収する膜を開発したと発表した。
産総研は役割の異なる2種のCO2分離用イオン液体を組み合わせ多孔質材に染み込ませることで、希薄なCO2を高い選択率で分離回収できる高性能な膜を開発した。この膜は、大気と同程度の CO2(約 0.04%)のモデルガスの分離試験で、CO2をN2よりも1万倍以上速く透過させることができた。
同技術を活用し、大気中のCO2を直接回収するDirect Air Capture(DAC)技術の開発を進めるとしている。
◆電子材料:大日本印刷が大型メタルマスクの生産ラインを黒崎工場に新設(11月10日)
大日本印刷(以下:DNP)は、黒崎工場内(福岡県)に有機EL(OLED)ディスプレイ製造用メタルマスク(以下:メタルマスク)の大型品を生産するラインを新設することを発表した。
新ラインでは、今後需要の拡大が見込まれる、タブレット端末およびノートパソコン向けのOLEDディスプレイの生産効率を大幅に高める、第8世代のガラス基板に対応した大型メタルマスクを生産する。また、メタルマスクの主要生産拠点である三原工場(広島県)をバックアップすることで、BCP(事業継続計画)への対応強化を図る。
投資額は200億円で、2024年上期に稼働を開始する予定である。新設ラインは生産を終了した液晶ディスプレイ用カラーフィルターの工場建屋を活用することで、投資効率の向上を図る。DNPは、黒崎工場のライン新設により、メタルマスク生産能力を従来の2倍以上にしていく計画としている。
◆樹脂関連:積水化学工業が米国においてポリオレフィンフォームの生産能力を増強(11月9日)
積水化学工業の高機能プラスチックスカンパニーは、米国の100%子会社「SEKISUI VOLTEK」において、ポリオレフィンフォームの新建屋と生産ラインを増設し、生産能力を増強すると発表した。
同社のポリオレフィンフォームは、ポリオレフィンを電子線により架橋させ、加熱発泡させた柔軟な独立気泡発泡体で、自動車をはじめ、家電やモバイル端末などのエレクトロニクス、建築といった各分野・用途で展開している。今後、継続的な市場伸長が見込まれることから、39百万米ドル(約60億円)を投じて新建屋と生産ラインを増設することとなった。
積水化学工業では、今回の増設により生産能力を現状の約6000トン/年から2割程度向上させることを目指し、2024年度第2四半期(7~9月)から稼働予定としている。
◆エンジニアリング:東洋エンジニアリング子会社が東ソーから分離精製剤製造設備建設プロジェクトを受注(11月9日)
東洋エンジニアリングの国内子会社であるテックプロジェクトサービスは、東ソーが計画する分離精製材製造設備の建設プロジェクトを受注したと発表した。
分離精製剤は、バイオ医薬品製造等の精製工程で使用されるもので、バイオ医薬品で現在主流となっている抗体医薬品はもとより、近年注目を集めている核酸医薬品の精製においても高い分離性能を有している。
近年、抗体医薬品を中心に遺伝子治療薬、新型コロナウイルスワクチン等で需要が拡大し、核酸医薬品市場も急速に成長していることから、この分野での新規開発・製造への投資が活発になっている。今回のプロジェクトは、その需要増に応え、安定供給体制の確立を図るため、大幅な生産能力の増強を行うものである。
建設地は東ソー南陽事業所(山口県)、完成予定は2024年7月としている。
◆エンジニアリング:東洋エンジニアリングがBASFの中国における大型石油化学プロジェクトを受注(11月8日)
東洋エンジニアリングは、ドイツBASFが中国広東省に計画する大型石油化学コンプレックス (BASF Zhanjiang Verbund Project) におけるアクリル酸プラントの設計・調達・建設、エチレンプラント、製品貯蔵施設、ポリエチレンプラントのプロジェクト管理支援およびプラントコンプレックス全体のプロジェクト管理/統括業務を受注したことを発表した。
2019年11月に正式に開始された同プロジェクトは、2030年までの総投資金額が約100億ユーロのBASF史上最大の投資計画であり、BASF単独の元に運営される。サイト規模についても、ドイツのルートヴィヒスハーフェン、ベルギーのアントワープに次ぐ世界で3番目に大きいBASFのサイトになるとしている。
◆リサイクル:コスモ石、日揮ホールディングス、レボインターナショナルが国内初の国産SAFの大規模生産の実現に向けた新会社を設立(2022年11月)
コスモ石油、日揮ホールディングス、レボインターナショナルの3社は、廃食用油を原料とした国産SAF(持続可能な航空燃料)の製造や供給事業を行うために、新会社「合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY」を設立したと発表した。
3社は、国内での廃食用油の収集からSAFの製造、輸送・供給に至るまでのサプライチェーン構築に向けて、2020年夏から共同で事業化検討を進めてきた。今回設立する新会社は、国内初となる国産SAFの大規模生産を目指し、100%廃食用油を原料とした年間約3万キロリットルのSAFの国内供給を実施する。
SAF生産設備は、大阪府堺市のコスモ石油堺製油所内に2023年夏を目途に着工し、2024年内に完工、2024年度下期~2025年度初での運転開始を予定している。本設備からはバイオプラスチックの原料となるバイオナフサや、バイオディーゼルも生産するとしている。
◆非鉄金属:住友金属鉱山がカナダのコテ金開発プロジェクトの計画を見直し(11月8日)
住友金属鉱山は、カナダのコテ金開発プロジェクトについて、初期起業費の増額と生産開始時期の遅延を発表した。
住友金属鉱山はカナダの産金会社アイアムゴールド社と共同でプロジェクトを運営しているが、建設工事内容の詳細仕様の変更に伴う資材の数量や工数の増加、労務費や資材物価上昇等の経済環境の変化に加え、新型コロナウイルス感染再拡大による影響の顕在化、職能別組合ストライキによる一部工事の中断、世界的なインフレの亢進等の不測要因が加わり、更に起業費が増加する見通しとなった。
今回、住友金属鉱山が精査した結果、初期起業費が1,785百万米ドル(主要重機のリース125百万米ドルを含まない金額)から2,820百万米ドル(主要重機のリース145百万米ドルを含まない金額)に増加し、生産開始も2023年予定から2024年1~3月期に遅延する見込みとしている。
◆ゴム製品:住友理工がメキシコの自動車用防振ゴム製造工場を増強(11月8日)
住友理工は、メキシコで自動車用防振ゴムなどを製造・販売する、S-Riko de Querétaro(以下、SRK-QRO)のオドネル工場の生産能力を増強すると発表した。
投資額は約27億円であり、自動車用防振ゴムの生産能力を1.5倍に拡大する。この背景には、北米におけるピックアップトラックの旺盛な需要が挙げられ、新たに受注した自動車用防振ゴムを生産するため、SRK-QRO のオドネル工場を拡張することとした。
今後は、2023年末に量産開始後、徐々に生産レベルを引き上げ、フル稼働は2024年度以降の予定としている。
◆分散剤:三洋化成工業のグループ会社であるサンノプコが高機能分散剤の生産能力増強を発表(11月7日)
三洋化成工業は、同社子会社であるサンノプコにおいて高機能分散剤の生産能力を増強することを決定したと発表した。
サンノプコの高機能分散剤は建築塗料、工業用の防食塗料、電子材料分野など様々な分野で使用されている。例えば、環境負荷低減の観点から水系化が進む建築・防食塗料用では耐水性に優れるサンノプコの高機能水系分散剤や、電極活物質や微粒子セラミックスの分散に好適な分散剤を取り揃えており、それぞれ需要拡大が見込まれる。
今回の生産能力増強の投資金額は約4億円としており、現在の生産場所であるサンノプコの名古屋工場に新たに生産設備を設置する。稼働予定は2024年上期としている。
◆フッ素関連:セントラル硝子がハネウェル社とHFO-1233zd(E)事業提携のパートナーシップを締結(11月7日)
セントラル硝子は、米国ハネウェル社とHFO-1233zd(E) 事業における長期パートナーシップ契約を締結したと発表した。
本事業提携では、同社はHFO-1233zd(E)をハネウェル社へ独占的に供給し、ハネウェル社は当製品を同社商標である「Solstice LBA(HFO-1233zd(E))」として、主に発泡剤用途で国内および海外の顧客に販売する。
Solstice LBAはオゾン層破壊係数ゼロ、地球温暖化係数も非常に小さく(GWP =1)、環境負荷の低い製品であり、冷蔵・冷凍庫、スプレーフォーム、パネルなど各種断熱材料において、高いエネルギー効率(断熱性能)を実現することができるとしている。
◆水素関連:旭化成が水素製造用アルカリ水電解パイロット試験設備を着工(11月7日)
旭化成は、NEDOのグリーンイノベーション基金事業の助成を受け、川崎製造所において水素製造用のアルカリ水電解パイロット試験設備を着工したと発表した。
現在、同社は水素製造用のアルカリ水電解システムを中心とした水素に関する事業の開発を推進している。今後、拡大する水素需要に応えるため、さらなる設備の大型化が必要であり、変動する再生可能エネルギー由来の電力活用へも対応できる技術の開発が課題となっている。
同設備は、0.8MW×1~4モジュールで構成され、仮に運転中に1モジュールが故障した場合や、夜間を想定した低出力運転など、様々な環境における装置挙動を再現できる。また、再生可能エネルギーは出力が不安定なため、水電解装置には高い変動応答性が求められるが、同設備はこのような変動がシミュレートできる装置設計であり、再生可能エネルギーとの連携や電力系統の調整力が検証可能となっている。
今後、建設工事、機器設置および試運転を経て、2024年初頭の運転開始を目標とし、複数の10MWモジュールからなる大型アルカリ水電解装置を2025年までに上市する予定としている。
◆電池材料:住友化学が「柔固体」型電池の共同開発に成功(11月7日)
住友化学は、京都大学、鳥取大学と共同開発した柔軟性のある新素材により、圧力を加えずに高容量の固体型電池を安定作動させることに成功したことを発表した。
全固体電池は、現在主流のリチウムイオン二次電池に用いられる電解液を固体にしたもので、容量と充放電時間、安全性の課題を払拭することができることから、近年注目を浴びている。しかし、硫化物系無機化合物をベースとした固体電解質は硬く、柔軟性に乏しいため、良好な電池作動のために固体電解質と電極との界面をいかに接合するかが課題であった。
今回、新素材を用いることで、無加圧方式で約230 Wh/kgの容量達成に成功した。これにより加圧に必要な部品を省くことができるため、電池の重量およびコストの大幅な削減が見込まれ、安全性の高い固体型電池の早期実用化が期待できる。
柔固体型電池は、航続距離や充電時間の観点から高エネルギー密度および高出力特性が求められるEV用の次世代電池など、幅広い分野への応用が期待されるとしている。
◆価格改定
・住友電気工業が光ケーブル及び光配線製品を11月16日受注分より値上げ
値上げ幅は、光ケーブル:平均15%
光コネクタ付ケーブル:平均10%
光成端箱/光クロージャ:平均10%
・デンカが結晶質アルミナ短繊維「デンカアルセン」を12月1日納入分より値上げ
値上げ幅は、バルク:200円/㎏以上
ブランケット、ボード、ペーパー、フェルト、フェルトブロック、フィックス、キャスト:10%以上
・日本製紙が包装用紙を12月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、15%以上
・日本製紙が印刷・情報用紙を2月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、印刷用紙:15%~25%
情報用紙:15%~25%