2024.11.07 発行
◆有機:コスモ石油が韓国におけるパラキシレン合弁事業を解消及び株式譲渡(11月1日)
◆メディカル:帝人とHilleman Laboratoriesが再生医療領域における開発製造受託機関(CDMO)事業についての国際的な
戦略的業務提携に関する合意書を締結(10月31日)
◆東洋エンジニアリングが中国でポリアセタール建設プロジェクトを受注(10月31日)
◆電子材料:富士フイルムがEUVレジストとEUV現像液の販売を開始(10月29日)
◆電子材料:東洋紡が宇都宮工場の離型フィルム製造設備の完成を発表(10月29日)
◆電子材料:東ソーが半導体製造の低コスト化に貢献するGaNスパッタリングターゲット材を製造開始(10月29日)
◆樹脂:帝人フロンティアが生分解性と実用性を両立するPLA樹脂の本格展開を開始(10月29日)
◆樹脂:住友化学が千葉工場における低密度ポリエチレン(LDPE)製造設備の生産効率化を発表(10月29日)
◆リサイクル:JSPが、回収原料配合発泡ポリエチレン「エルブロックエース RE」の販売を開始(10月29日)
◆樹脂:日本ゼオンがシクロオレフィンポリマーの新グレードを上市(10月28日)
◆エチレン:丸善石油化学がエチレン生産最適化の検討を開始(10月28日)
◆リサイクル:東洋紡がリサイクル原料使用比率100%の工業用フィルム「レナシャイン」を新開発(10月28日)
◆フィルム:東洋紡が100%植物由来樹脂を利用した工業用途向け二軸延伸ポリ乳酸フィルムを新開発(10月28日)
◆価格改定
・ENEOSがベンゼンの11月の契約価格を改定
・DICが顔料製品を11月15日出荷分より値上げ
・カネカがイースト製品を12月1日出荷分より値上げ
◆有機:コスモ石油が韓国におけるパラキシレン合弁事業を解消及び株式譲渡(11月1日)
コスモ石油は、保有するHD Hyundai Cosmo Petrochemical(以下、HCP)の全株式をHD Hyundai Oilbank(以下、HDO)に譲渡したことを発表した。
コスモ石油は、パラキシレン事業への参入を目的に2009年にHDOとの合弁会社としてHCPを設立した。しかし、近年はパラキシレンの最大需要国である中国において、パラキシレン製造装置の新設・増強が相次いだことや経済の景気減速に伴い、市況低迷が継続している。こうした状況によりHCPの収益環境が悪化し、コスモ石油が保有するHCPの全株式をHDOに譲渡する結論に至った。
コスモ石油は、ミックスキシレンを石化原料としてHCPに供給してきたが、今後は事業環境に応じて、石化原料向けの販売を継続すると共に、同社の強みであるショートポジションを活かしてガソリン生産に取り込む等、柔軟かつ最適な製油所運営を通じて、一層の石油事業全体の競争力強化と収益の向上を図るとしている。
◆メディカル:帝人とHilleman Laboratoriesが再生医療領域における開発製造受託機関(CDMO)事業についての国際的な戦略的業務提携に関する合意書を締結(10月31日)
帝人とバイオテクノロジー企業であるHilleman Laboratories(本社:シンガポール)は、再生医療領域におけるCDMO事業に関する国際的な戦略的業務提携に関する合意書を締結したと発表した。
再生医療領域における CDMO の需要は、再生医療等製品開発の高難度化や製造開発機能の分業化などを背景として急速に拡大している。
今回、アジア太平洋地域への進出を図る日本国内の顧客に向けた支援体制の強化に加え、シンガポールおよびその周辺地域から日本市場へ進出を図る海外顧客の取り込みを目指す帝人と、シンガポールにおける細胞・遺伝子治療領域の開発・製造支援体制の構築を図るHilleman Laboratoriesの双方のビジョンが一致したため、両社の本業務提携の合意に至った。今回の業務提携では、両社は、シンガポールまたは日本での開発需要を持つそれぞれの顧客を相互に紹介し合い、新たな市場展開の機会を提供していく。
今後、両社は今回の業務提携を基に、アジア太平洋地域においてさらに有用な開発製造支援サービスを提供するため、再生医療CDMO事業に関する強固な協力体制を構築するとしている。
◆東洋エンジニアリングが中国でポリアセタール建設プロジェクトを受注(10月31日)
東洋エンジニアリングは、中国子会社のToyo Engineering Corporation(以下、Toyo-China)が、ポリプラスチックス社の中国子会社であるDP Engineering Plastics (Nantong) (以下DPE)より、中国・南通市のポリアセタール樹脂プラントの建設プロジェクトを受注したと発表した。Toyo-Chinaは設計、調達、建設工事を担当する。
Toyo-Chinaは2022年にもDPEから同様の建設プロジェクトを受注しており、当該プロジェクトの成功を受けて、今回の受注に至ったとしている。
今回新設のプラントが稼働すると、DPEにとって世界最大のエンジニアリングプラスチック生産施設となる見込みであり、プロジェクトは2026年の完工の予定としている。
◆電子材料:富士フイルムがEUVレジストとEUV現像液の販売を開始(10月29日)
富士フイルムは、先端半導体の製造プロセスに用いられるネガ型の極端紫外線(EUV)向けフォトレジスト(以下、EUVレジスト)および現像液(以下、EUV現像液)の販売を開始したと発表した。
今回販売を開始したEUVレジストは、同社が従来のフォトレジストなどの開発で培った機能性分子技術を活用して、レジストの反応制御機能を持つ光分解性クエンチャー連結型光酸発生剤を導入した。EUV露光時のレジスト膜中の酸濃度を均一に保つことで、従来の化学増幅型レジストの課題であった回路パターンのばらつきを約17%低減させることに成功した。さらに、独自のEUV現像液の販売も開始した。現像時のレジストの膨潤を極限まで抑え、回路パターンのさらなる微細化に貢献する。
同社は、両製品の販売開始に伴い、設備投資を実施する。静岡拠点では、EUVレジストの生産・品質評価機能を強化するために、最新鋭の生産設備・検査装置を導入し、韓国の平澤拠点では、EUVレジストおよびEUV現像液の生産・品質評価機能を強化するために、クリーンルームを設置するとともに、最新鋭の生産設備・検査装置を導入する。
両拠点に導入する設備の稼働開始時期は、2025年10月の予定としている。
◆電子材料:東洋紡が宇都宮工場の離型フィルム製造設備の完成を発表(10月29日)
東洋紡は宇都宮工場内に新設する積層セラミックコンデンサ(セラコン)用離型フィルムの製造設備が完成し、始動式を開催したと発表した。
セラコンは、汎用的な電子部品として、さまざまな電子回路に搭載されており、近年、人工知能(AI)の開発や運用に必要なサーバーやデータセンターなどの高性能IT機器の普及、スマートフォンの高機能化、電装化・自動運転といった自動車産業などの発展を受けて需要が拡大している。
同社はこうしたセラコンの需要増に対応するため、宇都宮工場に約200億円を投じて離型フィルムの生産体制を強化した。新設備ではセラコンの製造工程に不可欠な離型フィルムを製造する。製膜した原反PETフィルムに別途コーティング処理を行うことで優れた平滑性を実現するオフラインコーティングと、製膜工程においてコーティング層を形成し原反から離型フィルムまでを一貫生産することで生産効率を高めたインラインコーティングの両方の生産方式に対応が可能である。今後、更なるセラコン需要の拡大が見込まれる中、ミドルからハイエンド品まで幅広い顧客のニーズに柔軟に対応できる生産体制の構築を図る。
生産能力は年間2万トンであり、2025年春頃の商用生産開始を目指すとしている。
◆電子材料:東ソーが半導体製造の低コスト化に貢献するGaNスパッタリングターゲット材を製造開始(10月29日)
東ソーは、窒化ガリウム(以下、GaN)スパッタリングターゲット材を開発し、同社グループの東ソー・スペシャリティマテリアル(山形県)にて製造を開始したことを発表した。
GaNは、照明向けLEDや小型急速充電器向け部品などで活用されている半導体薄膜材料である。既存の材料よりもエネルギー損失が低く省エネ効果が高いことから、データセンター向けパワー半導体、ウエアラブルディスプレイ向けマイクロLEDなどの用途で市場成長が見込まれている。
GaN半導体製造時の薄膜形成方法はCVD法(気相成長法)が主流だが、使用する設備や材料のコストが高いことが課題だった。同社はこれらの課題を解決するため、製造コストの低いスパッタリング法への置換えに向けたターゲット材の開発を行った。
同社が開発したGaNターゲット材は、独自の合成・焼結技術による純度の高さが特徴で、CVD法と同等の高結晶性GaNの成膜が可能である。現在は装置メーカーによる評価が進んでおり、また大学からも研究用に引き合いが活発化しているとしている。
◆樹脂:帝人フロンティアが生分解性と実用性を両立するPLA樹脂の本格展開を開始(10月29日)
帝人フロンティアは、これまでテスト販売していた、ポリマーに新たな生分解促進剤を添加したPLA (ポリ乳酸)樹脂を「BIOFRONT(ビオフロント)」と命名し、国内外において本格的に展開することを発表した。
「BIOFRONT」は、ポリマーに新たな生分解促進剤を添加することで、無添加のPLAポリマーと比較して加水分解を促進し、細菌や菌類による捕食・分解を加速させるため、強度や成型性などの実用性を大きく損なうことなく生分解速度を向上することができる。また、当該製品は、通常のPLAポリマーの樹脂と同様の加工や成型が可能なため、フィルムや射出・押出成形品などの加工・成型が可能である。また、通常のPLAポリマー同様に繊維素材への展開も可能で、テキスタイル・不織布などへの加工も可能としている。
同社は、今後も、生分解性を有する素材開発をさらに進めるなど、より環境負荷低減に貢献するソリューションを提供していくとしている。
◆樹脂:住友化学が千葉工場における低密度ポリエチレン(LDPE)製造設備の生産効率化を発表(10月29日)
住友化学は、千葉工場における低密度ポリエチレン(LDPE)製造設備の一部(2万トン/年)を2024年度内に停止することを発表した。
これまで実施してきた各種合理化の取り組みに加えて、一部設備の停止に踏み込むことで、運転を継続する設備全体の稼働率を向上させるとしている。
近年、LDPEの国内需要は、人口減少や少子高齢化などにより年々縮小傾向になっており、また、今後の大幅な増加は見込みにくい状況にある。千葉工場における生産体制効率化は、こうした事業環境の変化を踏まえて判断したものであり、併せて、顧客ニーズに応える、より高付加価値な分野へ製品構成の改善を実施するものとなっている。
同社は先に公表した同社と丸善石油化学との合弁会社である京葉エチレンの最適化検討を含む原料競争力の強化策や残存系列の固定費削減策など、引き続きあらゆる選択肢を検討、実施していくとしている。
◆リサイクル:JSPが、回収原料配合発泡ポリエチレン「エルブロックエース RE」の販売を開始(10月29日)
JSPは、梱包資材用途に販売しているエルブロック(発泡ポリエチレンビーズ成形品)シリーズに新しく「エルブロック エース RE」を加え、2024年10月より販売を開始したと発表した。
同品は、市場で使用されたエルブロックを回収および原料化し、この再生原料を30%以上配合したリサイクル製品である。回収原料は同社のエルブロックのみのため、従来品と変わらない品質と物性を保持している。加えて、同品には、持続性帯電防止性能が付与されており、繰り返しの使用や低湿度時においても帯電防止性能を十分に発揮する。帯電防止剤は、樹脂に強固に固定されているため、梱包物に移行することもほとんどない。
また、原料となるエルブロックの回収に関しては、自動車部品梱包材として使用されたものをはじめとして、他用途で使用されたエルブロックの回収目処もついており、需要に左右されることのない安定供給が実現できる見込みとしている。
◆樹脂:日本ゼオンがシクロオレフィンポリマーの新グレードを上市(10月28日)
日本ゼオンは、独自に開発した高機能樹脂・シクロオレフィンポリマー(製品名:ZEONEX・ZEONOR)の新グレードを2024年9月に上市したことを発表した。
本製品は従来品に比べてさらなる低複屈折を実現し、加えて耐光性・耐熱黄変性にも優れるため、主に光学レンズ用途としての拡大が期待される。
新グレード・ZEONEX 360Rは、低複屈折が求められる光学レンズ向けに同社が開発したもので、主にAR・VRグラスやヘッドアップディスプレイ、プロジェクター向けレンズ部品としての採用を見込んでいる。ZEONEX 360Rは、①低複屈折②耐光性③耐熱黄変性に優れ、特に低複屈折は従来品の1/3程度に抑えることに成功した。
ゼオンはこれまでも「高透明性」「低吸水性」といったシクロオレフィンポリマーが持つ優れた特長を活かして光学レンズ向け製品を複数ラインアップし、多様なニーズに応えてきた。さらに、今回の新グレード追加により、高い耐久性を保ちながら、より美しく鮮明な画像を提供できる光学レンズが実現可能になるとしている。
◆エチレン:丸善石油化学がエチレン生産最適化の検討を開始(10月28日)
コスモエネルギーホールディングスのグループ会社である丸善石油化学は、基礎化学品事業の更なる競争力強化に向けて、丸善石油化学のエチレン製造装置及び丸善石油化学と住友化学の合弁会社である京葉エチレンのエチレン製造装置の生産最適化の検討を開始することを発表した。
近年、中国での大型装置の新設・増強による世界的な供給過剰及び国内エチレン需要の減少といった厳しい事業環境により、日本のエチレン製造装置は低稼働が続いている。加えて、カーボンネットゼロを実現するためのグリーントランスフォーメーション(GX)への積極的な参画・貢献が求められている。
このような背景のもとで、同社はエチレン製造装置の停止を含めた能力削減の検討に着手し、エチレン製造装置の稼働率向上及び固定費削減による基礎化学品事業の収益基盤を強化すると共に、CO2 排出量削減の実現を目指す。更に機能化学品事業の強化を図ることで事業規模拡大に繋げ、競争力強化を実現していく。また、本取り組みを通じてコンビナートの維持発展にも繋げていくとしている。
◆リサイクル:東洋紡がリサイクル原料使用比率100%の工業用フィルム「レナシャイン」を新開発(10月28日)
東洋紡は、自社が製造・販売し顧客が使用済みの工程用ポリエステルフィルムを有価で回収、フィルム原料として再資源化する“Film to Film”の資源循環型リサイクルスキームを構築し、回収した使用済みフィルムを含むリサイクル原料を100%使用した循環型透明フィルム「レナシャイン」を新たに開発したことを発表した。
今回構築した“Film to Film”の資源循環型リサイクルスキームでは、まず、従来は使用後に産業廃棄物として処理されていたポリエステルフィルム「コスモシャイン」を顧客から有価で購入・回収し、洗浄・ペレット化する。このペレットに加えて、製造工程から出るフィルム屑などを再資源化したリサイクル原料を使用して「レナシャイン」を製造する。
同品は、透明性や接着性においてバージン原料100%由来の「コスモシャイン」並みの性能を持ち、ラベルなどの包装材や電子機器部材、光学フィルムにおいての活用が期待できるほか、ニーズに合わせて幅広い用途向けに展開が可能である。今後、実証実験などを通じてこの資源循環型リサイクルスキームの早期運用開始を目指すとしている。
◆フィルム:東洋紡が100%植物由来樹脂を利用した工業用途向け二軸延伸ポリ乳酸フィルムを新開発(10月28日)
東洋紡は、100%植物由来のポリ乳酸樹脂を原料とする環境配慮型の二軸延伸フィルムを開発したと発表した。
一般に透明性に優れるポリ乳酸樹脂は、液晶ディスプレー用光学フィルムなど工業用途への展開も期待されてきたが、熱性が低いため高温下で強度や剛性を得るのが難しく、通常の製膜条件下では本来の透明性が損なわれることや、工業用途での各種加工時の熱や応力が加わることで寸法変化や割れなどが生じやすいことが課題であった。
今回開発した製品は、工業用途に求められる耐熱性や機械特性を備えたポリ乳酸フィルムであり、延伸加工時の条件を精密に制御するとともに、フィルム内部に粒子を含まない手法を採用することで透明性の高いポリ乳酸フィルムを実現した。また、コーティング処理によって平滑性や接着性などの様々な特性を持たせることもできるため、工業用途での幅広い加工処理に対応可能である。
今後、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの代替素材として、光学フィルムや電子機器部材、離型フィルム用基材向けに展開を進めていくとしている。
◆価格改定
・ENEOSがベンゼンの11月の契約価格を改定
11月契約価格は、915$/t(前月比▲60$/t)
国内価格換算想定値は146.2円/kg
・DICが顔料製品を11月15日出荷分より値上げ
値上げ幅は、5~10%(一部例外製品あり)
・カネカがイースト製品を12月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、20円/kg(500g当たり10円)