メールマガジン

2024年6月20日

2024.06.20 発行

HEADLINE

◆電子材料:富士フイルムが韓国に先端半導体材料の新工場を竣工(6月14日)
◆水素関連:東邦チタニウムがチタン多孔質体薄板の新工場建設を決定(6月14日)
◆ゴム製品:三ツ星ベルトが名古屋工場新棟を建設(6月14日)
◆エンジニアリング:日揮ホールディングがアラブ首長国連邦向け大型低炭素LNGプラント新設プロジェクトのEPC契約を締結
 (6月13日)
◆電子材料:日本特殊陶業がMI手法を活用した新規無鉛圧電材料の開発に成功(6月13日)
◆電子材料:大日本印刷が黒崎工場で有機ELディスプレイ製造用メタルマスク生産ラインの稼働を開始(6月12日)
◆電子材料:三菱ケミカルが半導体フォトレジスト用感光性ポリマーの生産能力を増強(6月12日)
◆電子材料:旭化成が4インチ窒化アルミニウム(AlN)単結晶基板のサンプル提供を2024年度下期より開始(6月12日)
◆電子材料:信越化学が後工程半導体パッケージ基板製造装置と新工法を開発(6月12日)
◆エラストマー:日本ゼオンがZSエラストマーを完全子会社化し、吸収合併することを発表(6月12日)
◆ポリマー:日本ゼオンがシクロオレフィンポリマーの新プラント建設を決定(6月11日)
◆フィルム:帝人がポリカーボネート樹脂シート・フィルムの生産増強を発表(6月17日)
◆有機:ダウがタイにおけるプロピレングリコール生産能力の拡大を発表(6月7日)
◆価格改定
・東ソーがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)類を6月17日出荷分より値上げ
・DICがポリスチレン製品およびスチレン系製品を7月1日納入分より値上げ
・DICグループが顔料製品を7月1日出荷分より値上げ
・信越化学工業がシリコーンを7月1日出荷分より値上げ
・日本ゼオンが石油樹脂と熱可塑性エラストマーを7月1日納入分より値上げ
・住友ベークライトが食品包装用多層フィルム・シートを7月1日出荷分より値上げ
・住友ベークライトが鮮度保持フィルムを7月1日出荷分より値上げ
・タキロンシーアイがアセテートシートを7月1日出荷分より値上げ
・住友大阪セメントがセメント・固化材を2025年4月1日より値上げ
  
  

WEEKLY NEWS

◆電子材料:富士フイルムが韓国に先端半導体材料の新工場を竣工(6月14日)
 富士フイルムは、韓国平澤市で先端半導体材料の新工場が竣工したことを発表した。
 新工場は、半導体材料の韓国現地法人であるFUJIFILM Electronic Materials Koreaが、韓国平澤市に新たに建設したもので、イメージセンサー用カラーフィルター材料である「COLOR MOSAIC(カラーモザイク)」を生産する。本格稼働は、2024年12月末を予定している。
 イメージセンサーは、光を電気信号に変えて映像化する半導体で、デジタルカメラやスマートフォンなどに搭載されるほか、近年は、自動車の自動運転や、監視カメラをはじめとするセキュリティ機器、AR/VR機器などへの用途拡大が進んでいる。
 富士フイルムは、現在、イメージセンサー用カラーフィルター材料を静岡と、台湾の新竹で生産しており、熊本の半導体生産拠点においてもカラーフィルター料の生産設備導入を進めるなど、生産拠点を拡充している。
 今後は、新工場においてほかの先端半導体材料の生産を行うことも検討し、顧客ニーズにあった製品のタイムリーな市場導入を加速させていくとしている。

◆水素関連:東邦チタニウムがチタン多孔質体薄板の新工場建設を決定(6月14日)
 東邦チタニウムは、茅ヶ崎工場(神奈川県)内にチタン多孔質体薄板(以下、WEBTi) の新工場建設を決定したと発表した。
 地球温暖化対策として、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが進む中、CO2を排出しないエネルギーの一つとして水素が注目されている。そのでもPEM(固体高分子膜)型水電解装置などで製造するグリーン水素の需要は、年率約30%の成長が見込まれている。
 同社のWEBTiは、金属チタンが有する耐食性と導電性、多孔質体が有する通液性と通気性の特性を併せ持つ新製品であり、PEM型水電解装置におけるPTL(多孔質輸送層)の用途に活用が可能であるため、今後の需要予測を鑑み、新工場の建設を決定している。
 新工場建設の投資額は、約20億円、生産能力は1GW相当(水電解能力換算・年間)であり、2026年1月の稼働開始予定としている。

◆ゴム製品:三ツ星ベルトが名古屋工場新棟を建設(6月14日)
 三ツ星ベルトは生産・物流再編の一環として、名古屋工場(愛知県)に生産ラインと物流システム(自動倉庫)を併設した4階建ての新棟建設を開始すると発表した。
 これにより、労働環境の整備ならびに2024物流問題への対策を図るとともに、在庫の最適化と配送効率向上を目指すとしている。また、緊急時にも柔軟に対応できる製品供給体制を構築し、トータルコストの低減と事業継続計画(BCP)の強化を進めるとしている。
 なお、新棟の稼働開始予定日は2026年5月、投資予定金額は約60億円としている。

◆エンジニアリング:日揮ホールディングがアラブ首長国連邦向け大型低炭素LNGプラント新設プロジェクトのEPC契約を締結(6月13日)
 日揮ホールディングは、アブダビ国営石油会社(以下、ADNOC)が同国アブダビ ルワイス工業都市で計画する大型低炭素LNGプラント(年産480万トン×2系列)新設プロジェクトについて、ADNOCが最終投資決定を行ったことに伴い、本プロジェクトのEPC契約が正式に発効される見通しとなったことを発表した。
 新設するLNGプラントでは、原料である天然ガスを圧縮するコンプレッサーの駆動に、従来のガスタービンを使用するのではなく、クリーン電力を使用する電動モーターによる「E-Drive」を採用することで、プラント操業時のCO2排出低減に最大限配慮した中東および北アフリカ地域で初となる、また世界でも事例の少ない低炭素LNGプラントとなる予定としている。

◆電子材料:日本特殊陶業がMI手法を活用した新規無鉛圧電材料の開発に成功(6月13日)
 日本特殊陶業は、マテリアルズ・インフォマティクス(以下:MI)手法を活用し、 新たな材料開発フレームワークで高性能かつ量産可能な新規無鉛圧電材料を開発したと発表した。
 圧電材料は、鉛を含む従来のものは環境と健康へのリスクがあるため、代替となる無鉛圧電材料の開発が推進されている。一般に無鉛圧電材料のようなセラミックス材料は、焼成や成形などの工程が性能に及ぼす影響が大きいため、MI手法を適用する場合、材料組成とプロセス条件の組み合わせが複雑化する。さらに、実験段階から量産に移行する場合も、複雑化によるプロセス依存の課題のため、開発に時間を要するケースが多い。
 本開発においては、MI技術と電子実験ノートを活用し、同社所有の過去と現在のデータを一元集約することで、材料の組成とプロセス条件の組み合せを最適化させている。その結果、今回の開発ケースで考えられる 126 万通りの組み合わせパターンを550通りに短縮し、半年という短期間で目標性能を持つ無鉛圧電材料の開発に成功した。
 確立したMI手法を駆使し、今後は無鉛圧電材料だけでなく、様々な次世代の革新的な材料開発を加速するとしている。

◆電子材料:大日本印刷が黒崎工場で有機ELディスプレイ製造用メタルマスク生産ラインの稼働を開始(6月12日)
 大日本印刷(以下、DNP)は、福岡県北九州市の黒崎工場内に新設した有機EL(OLED)ディスプレイ製造用のメタルマスクの生産ラインの稼働を2024年5月に開始したことを発表した。
 スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、モニター等のIT製品でOLEDディスプレイの導入が広がっており、特にディスプレイの大型化のニーズが高まっている。それを受けて、OLEDパネルメーカー各社は、現在の第6世代(G6)サイズよりも生産効率が高いG8のガラス基板での量産を推進している。DNPは黒崎工場の新ラインで、こうした大型化のニーズを先取りしていく形で、G8サイズに対応したメタルマスクの生産体制を構築した。
 DNPは黒崎工場の本格稼働によって、メタルマスクの生産能力を従来の2倍とする予定であり、需要等の動向を把握・分析しながら、黒崎工場の設備を順次増強していくとしている。

◆電子材料:三菱ケミカルが半導体フォトレジスト用感光性ポリマーの生産能力を増強(6月12日)
 三菱ケミカルは、フォトレジスト用感光性ポリマー「リソマックス」の生産能力を増強するため、三菱ケミカル九州事業所・福岡地区において、ArF(フッ化アルゴン)フォトレジスト用リソマックスおよびEUV(極端紫外線)フォトレジスト用リソマックスの各量産設備を新設することを発表した。
 フォトレジスト用感光性ポリマーは、半導体の回路パターンをウエハーに転写するフォトリソグラフィー工程で使用されるフォトレジストの主成分となる樹脂であり、今後も市場成長が見込まれている。
 同社グループは現在、関東事業所・鶴見地区(神奈川県)でリソマックスを生産しているが、拡大する需要に対応するとともにサプライチェーンの強靭化を図るため、九州事業所・福岡地区に量産設備を新設することとした。これにより、ArFフォトレジスト用リソマックスは生産能力が2倍以上になるとともに、EUVフォトレジスト用リソマックスの初めての量産を開始する。設備の稼働時期は、ArFレジスト用が2025年10月、EUVレジスト用が2025年9月の予定としている。

◆電子材料:旭化成が4インチ窒化アルミニウム(AlN)単結晶基板のサンプル提供を2024年度下期より開始(6月12日)
 旭化成は、子会社であるCrystal IS社(本社:米国)が製造する4インチ(直径100mm)窒化アルミニウム単結晶基板(以下、AlN基板)の使用可能面積が99%を超えてきたことから、国内外の半導体デバイスメーカーへのサンプル基板の提供を2024年度下期より開始すると発表した。
 AlNは非常に広いバンドギャップエネルギーを持ち、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりも電力損失が小さく、耐圧が高いポテンシャルを有することから、エネルギー効率に優れ、次世代のパワーデバイスへの適用やRF(高周波)アプリケーションへの展開が期待されている。
 Crystal IS社は、2023年8月に、従来の4倍の面積となるAlN基板の4インチ化に世界で初めて成功したことを発表した。昨年の発表時点では使用可能領域は80%以上であったが、改善を重ねた結果、99%以上のAlN基板を実現した。
 Crystal IS社が米国ニューヨーク州で製造しているAlN基板には欠陥密度が低く、紫外線透過性が高く、不純物濃度が低いという特徴がある。その特徴を活かし、これまで殺菌用途を中心としたUV-C(深紫外線) LEDでの活用を進めてきた。今後は、サンプル提供を通じて社外のパートナーとのAlN半導体の研究開発を加速させ、実用化を進めていくとしている。

◆電子材料:信越化学が後工程半導体パッケージ基板製造装置と新工法を開発(6月12日)
 信越化学工業は、マイクロLED用製造システムに続いて、半導体パッケージ基板製造装置と新工法を開発したと発表した。
 本装置は半導体の前工程で用いられるデュアルダマシン工法を後工程用パッケージ基板製造に応用し(信越デュアルダマシン法)、インターポーザの機能を直接パッケージ基板に盛り込むことが可能な高性能なエキシマレーザ加工装置である。
 本装置の高度な微細加工の技術により、直接、多層パッケージ基板の各層に複雑な電気回路パターンを有機絶縁層の中に掘り込み、銅メッキで回路を形成することが可能となる。また、エキシマレーザを光源として利用し、大面積の電気回路パターンを一括成形することができる。信越デュアルダマシン法を用いると、現在主流のドライフィルムレジストを使用するセミアディティブプロセス(SAP)法では達成できなかった微細加工が可能となる。
 同社は、独自の素材技術と装置技術を融合させる取り組みを行っており、新たな製造プロセスを開発することで、装置と材料の両面からトータルソリューションを提案するとしている。

◆エラストマー:日本ゼオンがZSエラストマーを完全子会社化し、吸収合併することを発表(6月12日)
 日本ゼオンは、ZSエラストマー(ZSE)を2024年9月30日付で100%子会社化し、2024年10月1日付で吸収合併することを発表した。
 日本ゼオンはS-SBR(合成ゴム)事業において、住友化学との生産機能の統合を目指していたが、事業環境の変化に伴い合弁解消に同意し、独立して事業運営を行うこととなった。同社は住友化学の保有するZSEの全株式を購入し、合弁関係の解消を行うことで、ZSEは同社の完全子会社となる。
ZSEの吸収合併により、同社は経営資源を集中し、顧客対応窓口の一本化による効率化を進めるとしている。

◆ポリマー:日本ゼオンがシクロオレフィンポリマーの新プラント建設を決定(6月11日)
 日本ゼオンは、主力製品である高機能樹脂シクロオレフィンポリマー(以下、COP)の新プラント建設を決定したと発表した。
 同社は、かねてよりCOPの生産拠点分散によるレジリエンス強化策の検討を進めていたが、山口県周南市を選定し、新プラント建設用に事業用地を取得した。
 COPは、光学フィルム、光学レンズ用途だけでなく、医療用途、半導体用途での採用も拡大しており、今後も更なる需要拡大が見込まれることから、本設備の増設を決定した。なお、COPは水島工場の既存プラントで約 42,000t/年の生産能力を有しており、建設を決定した新プラントも合わせた全体の能力は、約54,000t/年まで増強されることを見込んでいる。
 新工場の竣工時期は2028年度上期、投資総額は約700億円の予定としている。

◆フィルム:帝人がポリカーボネート樹脂シート・フィルムの生産増強を発表(6月17日)
 帝人は、次世代自動車における内装や車載機器の高品質化に対応するため、ポリカーボネート樹脂「パンライト」のシートおよびフィルムについて新しい生産ラインを立ち上げ、6月17日より生産を開始することを発表した。
 電気自動車などの次世代自動車では、タッチパネルやヘッドアップディスプレイの採用が増えている。光学機器には、耐衝撃性と透明性に優れたポリカーボネート樹脂のシートやフィルムが用いられており、内装デザインの多様性や映像美の向上につながる高品質な製品への需要が高まっている。
 新たな生産ラインの生産能力は年産1,350トンであり、従来品よりも平滑性や表面硬度に優れた厚み100ミクロンから500ミクロンのシートおよびフィルムの製造が可能である。特に、シートやフィルムの製造工程で生じる微細な歪みなどを抑えた平滑性に優れる。さらに、加工が容易で複雑な形状にも対応可能な製品を生産できる。これにより、光学機器のデザイン性の向上や投影する映像の高画質化に貢献する。
 帝人は、自動車業界のみならず、需要が急増するVR/ARなどの最先端電気・電子機器向けにも提案を進め、2027年度には新生産ラインで製造したシートおよびフィルムで年間25億円の売上を目指すとしている。

◆有機:ダウがタイにおけるプロピレングリコール生産能力の拡大を発表(6月7日)
 ダウは、タイのラヨン県マップタプットにおける統合製造施設において、プロピレングリコール(PG)の生産能力を拡大したことを発表した。
 今回の増強により同社のプロピレングリコールの生産能力は年間8万トン増え、総生産量は年間25万トンとなり、マプタプットPG工場がアジア太平洋地域で最大になる。マプタプット施設の統合生産ラインは、プロピレンオキサイド(PO)など主要な上流PG原料のコスト競争力を維持しながら供給し、川下の高価値PG市場の成長を安定的に支える。
 ダウは、世界中のPG製造施設において、ISCC PLUS認証の下、バイオ循環型原料およびマスバランスアプローチによる循環型原料を使用し、より低炭素のエネルギー源を使用した持続可能なPG生産を推進している。すでに、北米・欧州・中南米において、持続可能性が外部機関から検証されている新しいPG技術を発表した。2024年末までにマップタプットPG施設でもISCC PLUS認証を取得する予定としている。

◆価格改定
・東ソーがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)類を6月17日出荷分より値上げ
 値上げ幅は、45円/kg以上
・DICがポリスチレン製品およびスチレン系製品を7月1日納入分より値上げ
 値上げ幅は、20円/kg以上
・DICグループが顔料製品を7月1日出荷分より値上げ
 値上げ幅は、5~15%(一部例外製品あり)
・信越化学工業がシリコーンを7月1日出荷分より値上げ
 値上げ幅は、10%以上
・日本ゼオンが石油樹脂と熱可塑性エラストマーを7月1日納入分より値上げ
 値上げ幅は、両品とも50円/kg
・住友ベークライトが食品包装用多層フィルム・シートを7月1日出荷分より値上げ
 値上げ幅は、8%
・住友ベークライトが鮮度保持フィルムを7月1日出荷分より値上げ
 値上げ幅は、10%
・タキロンシーアイがアセテートシートを7月1日出荷分より値上げ
 値上げ幅は、20%
・住友大阪セメントがセメント・固化材を2025年4月1日より値上げ
 値上げ幅は、トン当たり2,200円以上
 なお、特殊セメントおよび混合セメントは製造コスト等の上昇が顕著なため、個別に改定額を設定

TOPへ戻る