2024.07.25 発行
◆CO2対策:東洋エンジニアリングがNTPC社とインドにおけるe-メタノールの製造・事業性に関する共同検討を開始
(7月19日)
◆合成皮革:BASFが100%リサイクル可能な合成皮革の製造に向けたポリウレタンソリューションを発表(7月18日)
◆電子材料:ダイセルが高信頼性、材料コスト削減を実現する新接合材料を開発(7月17日)
◆バイオ:日揮ホールディングスが世界初のガス発酵によるバイオものづくりの研究開発拠点を神戸に新設(7月17日)
◆アンモニア:レゾナックが世界初の使用済みプラスチックをリサイクルしたアンモニアを燃料用途で供給(7月17日)
◆炭素:東海カーボンが黒鉛電極の生産能力の削減と生産拠点の集約を発表(7月16日)
◆電子材料:住友ベークライトが次世代パワー半導体向け高熱伝導シンタリング銀ペーストのサンプル出荷を開始(7月16日)
◆価格改定
・住友ベークライトが医薬品包装用フィルム・シート製品を9月1日出荷分より値上げ
◆CO2対策:東洋エンジニアリングがNTPC社とインドにおけるe-メタノールの製造・事業性に関する共同検討を開始(7月19日)
東洋エンジニアリングは、経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」に応募し、採択通知を受けたことを発表した。
本調査は、インド国営電力公社NTPC Limitedが製造を計画するインド南部におけるグリーン水素とバイオジェニックCO2を活用し、同社保有のライセンス技術g-Methanolにてe-メタノールを製造、本邦へ輸出の上、船舶燃料として供給、または原料として低炭素合成燃料を製造・販売するバリューチェーン構築事業の可能性を調査するものである。
g-Methanolプロセスは、様々なCO2排出源から回収したCO2と、再生可能エネルギー由来の水素から合成されたe-メタノールを製造する技術であり、回収したCO2をメタノール経由で他の化学品原料への変換や、メタノール由来の輸送燃料への変換など、カーボンリサイクルの選択肢を多様化することが可能となる。
同社は、化学・エネルギー分野での自社保有技術や経験を生かして、クリーンエネルギーを持続的に共有すること、およびバリューチェーンを構築することで循環型社会の構築に貢献するとしている。
◆合成皮革:BASFが100%リサイクル可能な合成皮革の製造に向けたポリウレタンソリューションを発表(7月18日)
BASFは、100%リサイクル可能な合成皮革の製造に向けた革新的なポリウレタンソリューションであるHaptex4.0を発表した。
合成皮革は、ポリウレタン(PU)、PETなど複数の原材料の複合材料であるため、使用済み合成皮革の再利用やリサイクルが業界で長年の課題となっていた。今回発表したHaptex4.0を使用した合成皮革とポリエチレンテレフタレート(PET)繊維は、革新的な配合とリサイクル技術により、層間剝離をすることなく一緒にリサイクルすることができる。これにより、素材の再利用が可能となり、廃棄物を一切出さず、より持続可能な製造プロセスを実現する。また、Haptex 4.0は手頃な価格で耐久性もあり、フットウエアやファッション、自動車の内装、家具に至るまで、さまざまな用途に利用ができる。
同社は、Haptex4.0を通じて持続可能で高性能かつ耐久性のある材料で顧客のグリーン変革を支援する新たな基準を立てるとしている。
◆電子材料:ダイセルが高信頼性、材料コスト削減を実現する新接合材料を開発(7月17日)
ダイセルと大阪大学産業科学研究所フレキシブル3D実装協働研究所は、銀(Ag)とシリコン(Si)の複合焼結材料の新開発に成功したと発表した。
この新開発材料は、銀のみを使用した従来材料と比較し、厳しい熱衝撃試験後の結果において(-50℃〜250℃で1000サイクル)、約2倍の強度保持率を達成している。
今回の研究で新開発した銀とシリコンの複合焼結材料をSiCパワー半導体とDBC基板(Cu回路付きセラミック基板)の接合材料として使用することで、SiCパワー半導体と接合材料の熱膨張ミスマッチを低減させ、厳しい使用環境においても接合界面の亀裂や構造破壊が起こりにくくすることができる。さらに、シリコンを加えることにより、従来の銀のみの接合材料と比較して材料コストの削減につながることが期待される。
この成果は、SiCパワー半導体の長寿命化と、実装構造の信頼性向上、ならびに接合材料コストの削減につながり、EV(電気自動車)への応用など、新世代パワー半導体モジュールの社会実装を加速することが期待されるとしている。
◆バイオ:日揮ホールディングスが世界初のガス発酵によるバイオものづくりの研究開発拠点を神戸に新設(7月17日)
日揮ホールディングス(日揮HD)は、神戸市の「ポートアイランド」に世界初となるガス発酵によるバイオものづくりの研究開発拠点を新設することを決定し、2024年8月に建設を開始することを発表した。
加えて、「統合型バイオファウンドリ」事業で協業するバッカス・バイオイノベーション(以下、バッカス)の第三者割当増資を引き受け、バッカスの研究開発拠点にも至近となる研究開発用地をポートアイランドに取得し、世界初のガス培養技術開発拠点である「バイオプロセス研究所」(通称:JBX)を新設する。JBXでの研究開発で用いる微生物は、二酸化炭素をものづくりの原料として利用できる水素酸化細菌を想定している。
JBXの新設は、日揮HDとバッカス、カネカ、島津製作所の4社が共同提案た「CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発」プロジェクトの一環として行うものである。
研究開発拠点の新設は、神戸市が推進する神戸医療産業都市にも合致する取り組みであり、世界に向けてバイオものづくりの社会実装を推進するとしている。
◆アンモニア:レゾナックが世界初の使用済みプラスチックをリサイクルしたアンモニアを燃料用途で供給(7月17日)
レゾナックは、日本郵船が世界初の商用のアンモニア燃料船として8月下旬に竣工する予定のアンモニア燃料タグボート(以下、A-Tug)に、同社製の環境性能の高い低炭素アンモニアを供給したことを発表した。
供給したアンモニアは使用済みプラスチックをリサイクルして製造したものを使用しており、使用済みプラスチック由来のアンモニアを燃料用途で供給するのは世界初である。
アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないため、地球温暖化対策に貢献する次世代燃料として注目されている。A-Tugに供給する同社のアンモニアは、家庭や企業からゴミとして排出される使用済みプラスチックを原料の一部に使用して「プラスチックケミカルリサイクル」により製造している。
同社は、長年蓄積したノウハウを活かして、低炭素アンモニアを安定的に製造し、船舶まで安全に輸送提供していくとしている。
◆炭素:東海カーボンが黒鉛電極の生産能力の削減と生産拠点の集約を発表(7月16日)
東海カーボンは、電極事業の構造改革の一環として、2025年7月までに、日本と欧州の黒鉛電極生産能力を、年間56千トンから同 32千トンに削減することを発表した。また、生産能力削減に向け、国内黒鉛電極生産を防府工場に集約し、滋賀工場での生産を2025年7月末までに終了することを決定した。
黒鉛電極市場は、世界的な鉄鋼生産の低迷による需要が減少していることに加えて、中国・インドからの低価格製品の影響により、市況が軟化している。これに対処するため、防府工場に生産を集約し、2025年7月までに滋賀工場の生産を終了する。国内では滋賀工場の生産を終了し、防府工場に集約することで生産能力を約50%削減し、年間出荷能力を年間26千トンから12千トン体制とする。また、欧州では生産能力を約30%削減し、年間30千トンから20千トンに変更する。なお、北米拠点においては、生産能力の変更はなく、年間40千トンのままとなる。
東海カーボンでは、今回の生産体制再構築により、抜本的な構造改革を実現し、競争優位性を高め、北米、アジア、欧州市場における大口径品や高品質な黒鉛電極の需要に対応していくとしている。
◆電子材料:住友ベークライトが次世代パワー半導体向け高熱伝導シンタリング銀ペーストのサンプル出荷を開始(7月16日)
住友ベークライトは、環境負荷の大きい鉛半田(鉛含有量37%)の置き換えが可能な次世代パワー半導体向け高熱伝導シンタリング銀ペースト150 W/m・Kのサンプル出荷を開始したと発表した。
近年、Siよりも優れた特性を持つSiCパワー半導体の需要が拡大している。SiCパワー半導体は、高電力で使用されることが多く発熱量が高い特性があるが、SiCは熱伝導性が高い素材であり、熱を効率的に拡散することが難しいという課題がある。よって、基板とチップを接合するダイアタッチ材料には高い放熱性が求められるため、従来、ダイアタッチ材料には鉛半田が多く適用されているが、その半田には有害な物質や重金属が含まれることがある。その課題を解決するため高熱伝導材としてシンタリング銀ペーストが注目されており、市場の拡大が期待されている。
今回開発した銀ペーストは、樹脂と銀を組み合わせているため、150W/m・Kという高い放熱性を有しながら、無加圧工程での使用が可能であり、接合部材へのダメージ低減が期待される。住友ベークライトは、顧客での評価を進めており、2024年12月の量産実績化を目指すとしている。
◆価格改定
・住友ベークライトが医薬品包装用フィルム・シート製品を9月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、スミライトVSS・VSL:7%以上、スミライトNS・CEL:8%以上