2025.02.20 発行
◆リサイクル:関東電化工業がリチウムイオン二次電池のリサイクルプラントの建設を決定(2月14日)
◆電子材料:デンカが低誘電有機絶縁樹脂「スネクトン」を上市(2月12日)
◆電子材料:レゾナックが次世代半導体パッケージ向け低熱膨張銅張積層板を開発(2月12日)
◆フィルム:三菱ガス化学がフッ素成分を含まない透明ポリイミドフィルムの量産化に成功(2月12日)
◆繊維:東洋紡エムシーが溶融紡糸法を用いたポリフェニレンエーテル(PPE)の繊維化に成功(2月12日)
◆共重合体:クラレがアクリル系ブロック共重合体の生産および販売の終了を発表(2月12日)
◆樹脂:住友化学が欧州・化学大手サイエンスコ社のLCP(液晶ポリマー)事業の買収を発表(2月10日)
◆リサイクル:関東電化工業がリチウムイオン二次電池のリサイクルプラントの建設を決定(2月14日)
関東電化工業は、水島工場(岡山県)内に、使用済みのリチウムイオン二次電池(LIB)などからリチウムを回収するリサイクルプラントの建設を決定したことを発表した。
同社は、住友金属鉱山とのこれまでの共同開発により、住友金属鉱山のLIBリサイクルプロセスから発生したLi含有スラグを、関東電化工業の湿式精錬法を用いてLIBに再利用可能な高純度リチウム化合物として再資源化し、電池材料へと水平リサイクルする技術を世界で初めて確立している。
今回建設を決定したリチウムイオン二次電池リサイクルプラントは、2023年8月に発効された欧州電池規則で定められるメタル回収率・リサイクル材含有率への対応を見据えた設計としている。また、今後予想される使用済みLIBの発生量増加に対応するため、更なる設備能力の増強などの検討を進めていく。
プラントの建設は2024年度中に開始し、2027年10月の完成を予定しており、設備能力(原料処理量)はLIBセル換算で年間約5千トンの計画としている。
◆電子材料:デンカが低誘電有機絶縁樹脂「スネクトン」を上市(2月12日)
デンカは、次世代高速通信(Beyond5G、6G)において、電気信号の損失(伝送損失)を低減させるために素材に要求される電気特性(低誘電率、低誘電正接)を備えた低誘電有機絶縁樹脂(製品名:スネクトン)を上市したことを発表した。
各種高速通信機器の銅張積層板(CCL)向けでの販売を開始したほか、更に完全硬化後も軟質性を有するという特性により、フレキシブル銅張積層板(FCCL)や各種層間絶縁材用途での採用検討が進んでいる。今後、PC、スマートフォン、データセンター、携帯電話基地局、ウエアラブル端末、自動車など幅広い分野への展開が期待されるとしている。
◆電子材料:レゾナックが次世代半導体パッケージ向け低熱膨張銅張積層板を開発(2月12日)
レゾナックは、半導体パッケージの大型化に伴う課題のひとつである「反り」を抑制した、次世代半導体パッケージ向け低熱膨張銅張積層板を開発したことを発表した。
近年、次世代半導体のパッケージ基板の大型化に伴い、基板の反りが信頼性へ与える影響はより大きくなっている。通常、基板の反りを抑制するため、銅張積層板の熱膨張係数を小さくすることが有効であるが、温度サイクル試験の冷却時に、他の材料との熱膨張差により、クラックが発生しやすくなる。
そこで、同社は、銅張積層板の樹脂とガラスクロスから成るコア層に、スケールの異なる構造体同士の物性や挙動の相互作用を考慮できる「マルチスケールFEM解析」を適用した。これにより、クラックが発生しやすい、コア層の樹脂にかかる応力を解析し、樹脂の特定の物性を制御することで、発生する応力を低減した銅張積層板を開発した。本製品の温度サイクル試験における寿命は従来比4倍を実現し、100mm x 100mmを超える半導体パッケージにも対応している。
また、同社は、本技術を活用して、汎用的な物性可視化システムを構築し、社内展開を開始した。このシステムでは、銅張積層板に限らず、封止材やフィルム材料など複数材料から成る幅広い製品に対応しており、同社が強みとする半導体後工程製品を中心に活用を開始している。2026年の量産開始を目指すとしている。
◆フィルム:三菱ガス化学がフッ素成分を含まない透明ポリイミドフィルムの量産化に成功(2月12日)
三菱ガス化学は、フッ素成分を全く含まない透明ポリイミドワニス「ネオプリム」を原料としたポリイミドフィルムの量産化に世界で初めて成功したことを発表した。
透明ポリイミドワニス「ネオプリム」は、イミド化完結済みかつ溶媒可溶性を有するポリイミドである。溶媒を留去するだけでポリイミド膜を容易に得られることから、高透明・高耐熱はもとより環境負荷の低い低温プロセス適性に優れており、光学部材、ディスプレイ、半導体、プロセス工程部材などの様々な分野で採用、検討が進んでいる。
従来の透明ポリイミドは有機フッ素成分を含むものがほとんどである一方、PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)は生態系や人体への影響が懸念され、欧米を中心に使用制限の動きがある。そのため、今後はPFAS成分を含まない材料への代替が進んでいくことが想定されている。
このような環境規制動向を背景に同社グループは2025年1月よりフッ素フリーのポリイミドフィルムの量産体制を整えた。今後、透明ポリイミドワニス「ネオプリム」に加えてポリイミドフィルムの展開を進めるとしている。
◆繊維:東洋紡エムシーが溶融紡糸法を用いたポリフェニレンエーテル(PPE)の繊維化に成功(2月12日)
東洋紡エムシーは、溶融紡糸法によるポリフェニレンエーテル(PPE)の繊維化技術を確立したことを発表した。
同法を用いたPPE単体の繊維化は世界初となる。PPEは、耐熱性、難燃性、耐薬品性に加え、優れた電気特性(絶縁性)を持つエンジニアリングプラスチックである。一方で、加熱溶融時の樹脂の流動性が低いため、他の樹脂と混合させたポリマーアロイとして用いられるケースが多く、PPE単体での溶融成形、溶融紡糸は困難だった。同社は、溶融工程を改良することで、樹脂の流動性を維持した状態で紡糸、繊維化することに成功した。
PPE単体の繊維化に成功したことで、PPEの優れた特性を生かした用途展開が可能となる。同社は、耐熱性や絶縁性が求められる電気・電子分野をはじめ、耐加水分解性や耐薬品性を生かしたフィルターなど、幅広い用途を視野に入れている。今後は量産技術の確立とともに、PPE繊維の早期実用化を目指すとしている。
◆共重合体:クラレがアクリル系ブロック共重合体の生産および販売の終了を発表(2月12日)
クラレは、アクリル系ブロック共重合体(クラリティ)の生産および販売終了を決定したことを発表した。
同社は2012年の事業化以降、様々な用途への展開を進め、事業拡大に取り組んできたが、将来的な収益性および安定供給の観点から事業継続が困難であると判断した。
今回の決定に伴い、2026年6月末に同品の生産を終了するとしている。
◆樹脂:住友化学が欧州・化学大手サイエンスコ社のLCP(液晶ポリマー)事業の買収を発表(2月10日)
住友化学は、ベルギーに拠点を置くSyensqo SA/NV(以下、サイエンスコ社)の液晶ポリマー(以下、LCP)樹脂事業を買収したことを発表した。
LCPは、耐熱性や流動性、寸法精度に優れるなどの特長を有し、PCやスマートフォンなどに使用される電子部品をはじめ、幅広い製品に用いられている。
サイエンスコ社が手掛けるLCPは、高耐熱性に特長を有しており、同社のラインアップ、技術を取り込むことで、多様な顧客ニーズにきめ細かく対応することが可能となる。また、同社が有するLCP開発パイプラインおよび蓄積した生産技術を活用することで、ICTやモビリティなど幅広い産業分野の製品ラインアップの拡充につなげるとしている。
住友化学は、今後も成長が見込まれるLCP事業を重点事業の一つと位置付け、他社との様々な協業も選択肢として事業拡大を図り、2030年代前半に現在の2倍の売上収益を目指すとしている。