2025.03.06 発行
◆電池材料:出光興産が全固体電池材料(固体電解質)の量産に向け、中間原料である「硫化リチウム」の大型製造装置の建設
を決定(2月27日)
◆エチレン:ENEOSが石油化学製品の生産・供給体制の最適化に向けた検討開始を発表(2月26日)
◆フィルム:京セラが電波の進行方向を変える透明メタサーフェス屈折フィルムを開発(2月25日)
◆電子材料:住友化学が大阪工場で先端半導体用フォトレジストの評価設備の拡充を決定(2月26日)
◆シート:古河電気工業が植物由来樹脂を使用した無架橋低発泡ポリプロピレンシート「エフセル」を開発(2月25日)
◆電子材料:セントラル硝子は半導体製造プロセスに用いる「PFASフリーArF液浸レジスト」の開発に注力(2月21日)
◆価格改定
・クレハが塩酸を3月1日出荷分より値上げ
・住友化学が硫酸を3月10日出荷分より値上げ
・三ツ星ベルトが伝動ベルト・搬送ベルトおよびその他関連製品を5月1日受注分より値上げ
◆電池材料:出光興産が全固体電池材料(固体電解質)の量産に向け、中間原料である「硫化リチウム」の大型製造装置の建設を決定(2月27日)
出光興産は、全固体電池の材料となる固体電解質の量産に向け、硫化リチウムの大型製造装置(Li2S大型装置)の建設を決定したことを発表した。
全固体電池は、電解質が固体であるため、従来の液系電池と比較しイオンがより速く動ける特徴がある。そのため、全固体電池を搭載したEVは、充電時間のさらなる短縮や出力向上といったポテンシャルが見込まれまている。
同社は、2027~28年の全固体電池の実用化を見据え、全固体電池に不可欠な材料である固体電解質の開発と量産体制の構築を推進しており、現在、2つの小型実証設備が稼働している。今後、固体電解質の量産を進めるためには中間原料の硫化リチウムも量産化が必須であることから、今回、Li2S大型装置の建設を決定した。
同社は、固体電解質の重要な中間原料である硫化リチウムの製造能力を世界トップクラス(蓄電池3GWh/年相当)に拡大し、原料から中間原料、製品までの一貫したバリューチェーンを構築する。Li2S大型装置の建設予定地は同社の千葉事業所敷地内で、2027年6月に完工の予定としている。
◆エチレン:ENEOSが石油化学製品の生産・供給体制の最適化に向けた検討開始を発表(2月26日)
ENEOSは、川崎製油所のエチレン製造装置の一部停止を前提とした生産・供給体制の最適化に向けた検討を開始することを決定した。
国内石油化学製品の構造的な需要減退やアジアを中心とした国際競争の激化に加え、中国を中心とした石油化学装置の新増設と日本国内のエチレン需要減退により、エチレン製造装置は低稼働を余儀なくされる厳しい状況が続いている。石油精製販売・石油化学を取り巻くこのような様々な環境を総合的に勘案した結果、製油所・製造所の生産・供給体制の再構築が急務と判断し、今回、川崎製油所のエチレン製造装置の一部を停止することを前提に、生産・供給体制を最適化する検討を開始した。
今回、停止を検討している装置は、浮島南地区のエチレン製造装置であり、停止時期は2027年度末を計画している。この検討により、エチレン製造装置の稼働率向上および固定費削減による事業強化を目指すとしている。
◆フィルム:京セラが電波の進行方向を変える透明メタサーフェス屈折フィルムを開発(2月25日)
京セラは、電波の進行方向を所望の方向に変えることができる透明メタサーフェス屈折フィルムを開発したと発表した。
5Gで用いられているミリ波(28GHz帯)や、今後6Gに向けて検討されているさらに高い周波数帯の電波は直進性が強いため、障害物により基地局から見通しが得られない場所では安定した通信品質を確保できないという課題がある。
そこで同社は、基地局からの電波の進行方向を曲げることができるメタサーフェス屈折板の開発に取り組んできた。今回新たに、景観に配慮し、より簡易的な設置ができるよう、透明でフレキシブルな屈折フィルムを開発した。耐候性を重視したい場合には従来の基板タイプを、景観を重視したい場所ではフィルムタイプを選択するなど、設置形態に応じて柔軟なエリア構築のソリューションを提供する。
同社は、透明メタサーフェス屈折フィルムを窓ガラスやアクリルスタンドなどに貼り付けることで、景観に配慮しつつ、高い周波数を用いたミリ波5Gや6G等のサービスエリア拡大に貢献するとしている。
◆電子材料:住友化学が大阪工場で先端半導体用フォトレジストの評価設備の拡充を決定(2月26日)
住友化学は、大阪工場で液浸ArF(フッ化アルゴン)や厚膜i線など先端半導体プロセス向けフォトレジストの新製品開発および量産評価体制を強化するため、新たに先端前工程および先端後工程用の開発・品質評価設備を増強・導入することを決定したことを発表した。
フォトレジストは、半導体製造プロセスで回路パターン形成に使用される感光性樹脂である。半導体関連市場は生成AIの普及、IoT化の進展などにより、今後も高い水準の成長が見込まれている。
同社の液浸ArFレジストは、半導体の微細化・多層化に伴い、今後も安定的に需要が拡大する見込みである。また、半導体後工程の技術革新に伴い、高アスペクト比対応の厚膜i線レジストの需要も伸長する見通しである。
ここ数年の同社の半導体材料分野の設備投資は、今回の投資を含めて、1,000億円レベルに到達する。新設備は、2025年度から2026年度上期にかけて順次稼働する予定である。今後も先端レジストの事業拡大を加速し、2030年にICT&モビリティソリューション部門でコア営業利益1,000億円を目指すとしている。
◆シート:古河電気工業が植物由来樹脂を使用した無架橋低発泡ポリプロピレンシート「エフセル」を開発(2月25日)
古河電気工業は、植物由来の樹脂を使用した無架橋低発泡ポリプロピレンシート「エフセル」を開発したことを発表した。
一般的な低発泡ポリプロピレンシートでは、バージン材の使用が主流であるが、近年は環境に配慮した製品に関する要望が増加している。文具や梱包材、緩衝材など幅広い用途で使用される無架橋低発泡ポリプロピレンシート・エフセルシリーズにおいても、再生材を使用(RCグレードでは50%以上)するなど、環境に配慮した製品の開発に取り組んできた。
今回、同社が長年培ってきた組成開発技術を活かして、再生材の使用率を従来品(RCグレード)の50%から60%へ高めるとともに、植物由来樹脂を20%使用した無架橋発泡体の実機試作に成功した。また、試作ラインにおいては植物由来樹脂を100%使用した無架橋発泡体のサンプル取得にも成功した。これらの開発品は、環境配慮が求められる電子機器や医療機器の部材にも用いることができる。同社では、2製品とも2025年中に量産化する予定としている。
◆電子材料:セントラル硝子は半導体製造プロセスに用いる「PFASフリーArF液浸レジスト」の開発に注力(2月21日)
セントラル硝子は、ArF液浸レジスト材料である光酸発生剤および撥水ポリマーのPFASフリー化に成功したことを発表した。
半導体の製造プロセスで用いられる材料には、PFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)が含まれているものも多く、近年環境負荷の観点でPFASを使わない新規材料の開発が求められている。同社では、これらの要望に対応する為、環境に配慮した製品の開発に注力していた。
開発を進めるにあたり、同社では半導体プロセス分野の世界的な研究機関であるimecと、2024年10月に共同開発契約を締結した。このパートナーシップにより、「PFASフリーArF液浸レジスト」の開発を加速するとしている。
◆価格改定
・クレハが塩酸を3月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、 10円/kg以上
・住友化学が硫酸を3月10日出荷分より値上げ
値上げ幅は、濃硫酸(濃度98%以上)、薄硫酸(濃度70%以上)ともに6円/kg
・三ツ星ベルトが伝動ベルト・搬送ベルトおよびその他関連製品を5月1日受注分より値上げ
値上げ幅は、10%以上