―LiBおよびその主要部材の中国市場動向(モバイル用と自動車用)―
■中国のモバイル用LiB及び主要部材動向中国のモバイル用LiBは、このところBYD、BAK、天津力神、ATLなどのメーカーが生産を伸ばし、全世界の20%程を生産している状況にある。特に、このところ目立って話題になっているのは日本勢を韓国勢が2011年に抜いたことであるが、中国についても今後もポテンシャルがある事から、日本勢、韓国勢の脅威になるであろう事は注目される点である。
中国でのLiB自体の生産動向も注目されるが、それに加えLiB用主要部材の中国国内での生産状況にも注目しなければならない。それは、数年前までは中国国内メーカーのLiB用主要部材の品質が日本、韓国などより劣っており、部材を輸入するか、品質に問題はあるものの中国国内で使用するレベルでは問題ないだろうという状況で部材が使用されていた。
それが、この1~2年で中国LiB用主要部材メーカーの技術レベルが向上し、モバイル用では現在既に日本、韓国と同等レベルの正極材、負極材、電解液、セパレータを生産しているものとみられる。逆に、今後は中国からコストの安いLiB用部材が、大量に輸出される状況も考えられるのではないか。
この中国でのLiB用部材の品質向上は、中国独自に品質改良されてきたというよりも、日本、韓国などの先進技術を持った技術者が中国に渡り、現地メーカーと時間をかけて改良されてきた結果ではないかと取材などから推測される。
現在、中国のLiB用主要部材メーカーとしては、以下のメーカーが挙げられる。
正極材:湖南杉杉新材料、中信国安、BYD、BTR等
負極材:上海杉杉科技、BTR等
電解液:張家港市国泰華栄化工新材料、東莞市杉杉電池材料、天津金牛電源材料、広州天賜高新材料等
セパレータ:星源材質科技股份、佛山市金輝高科光電材料、新郷市格瑞恩新能源材料股份、新郷市中科科技等
■中国の自動車用LiB及び主要部材動向
中国のモバイル用LiB及びその主要部材については、前記の状況にあるが、これに対して自動車用LiBについては、その状況とは異なった状況となっている。
自動車用LiBに関しては、中国ではいち早く2008年BYDがLiB使用のプラグインハイブリッド「F3DM」を販売したが、政府関係のみの販売で100台程にとどまった。その後、2009年日本で三菱自動車の「アイミーブ」、2010年日産自動車の「リーフ」が販売されてきているが、その間にも中国では一般車でのEV車の販売は目立たないが、公共機関のタクシー、バスでLiBを使用したEV車、HEV車を生産してきている。その生産台数はタクシーで数百台/年レベル、バスではHEV車も含め数千台/年の生産にとどまっている。
又、中国でのEV車、HEV車、PHEV車に使用されるLiB及びそこで使用される主要部材は、中国国内で調達、生産されているものとみられるが、日本などで使用されるLiB部材に比較し、品質面(特に、各部材の精製技術などの安全性)で比較すると若干劣ったものと言わざるを得ないものである。つまり、まだこの中国での量産技術の確立には時間がかかるものとみられる。
又、中国政府もEV車及びその主要部材の生産技術の難しさもさることながら、EV車のコストダウンが図られず、一般ユーザーでのEV車の購買意欲が高まらず、このままではエコカーの政府普及計画が進む見通しが立たず、昨年頃からこれまでのEV車のみの普及計画から、ニッケル水素電池使用も含み、HEV車を取り入れた計画に変更してきている。
なお、現状のEV車の全世界の生産動向、普及傾向を眺めてみると、中国よりEV車及びそこで使用されるLiB及びLiB用主要部材に関して、技術的先行している日本などでも、EV車の普及に予想していたよりも時間がかかっている状況にある。
これは、EV車の一般車に比較してのコスト高、インフラの整備不足などの理由が挙げられるが、高コストにも関わるが、LiB用部材のさらなる開発(コストダウンがメインの要求になるが)が今後も求められるのではないだろうか。